おしゃべり/絵って何?
講談社の「ベストカー」(日本で最も発行部数の多い車の雑誌だという)で連載されている藤田宜永さんのエッセイに絵を添えています。タイトルは『僕のおしゃべりは病気です』。藤田宜永さんは、長髪にサングラス、ロッカー風ないでたち……にもかかわらず、文壇一のおしゃべり男であるらしいのです。
そんな藤田さんが、車の雑誌だけど、車とは無関係におしゃべりについて綴る文章が、これまた調子が良く、読んでいて気持ちがいいのです。スラスラ読めて、読み応えがあり、切実な気持ちも伝わってきます。さすがプロ!と毎回思います。
僕はおしゃべりな人が好きだし、自分もどっちかというとおしゃべりな人間かもしれません。実際、楽しいおしゃべりの時間に勝るものってそうそうないです。担当さんからは、「藤田さんの文章に書いてあることを絵にしなくてもいいですよ。好きにやってください。ラフ?いりません、いりません」と、ありがたいことに、最高度の信頼を寄せていただいております。担当さんのメールの文章もこちらの気持ちを乗せるのがお上手で、楽しいのですが、褒めたついでにサラッと注文が入っていたりするのもニクいところです。おしゃべりの楽しさを絵に表そうと、幾分かラフなタッチで描いております。さて、プロ中のプロ藤田宜永さんとはうってかわって、プロの世界に横入りした私の拙い作文です。「小説すばる」で連載中の「ぼくの神保町物語」、第3回は「絵ってなんだろう?」というタイトルにしてみました。ずいぶん大きく出ましたね〜。
セツ・モードセミナーに通っていた頃の話を今回も書いています。長沢節は「デッサンは絵の基本じゃない、絵はデッサンからの解放だ」と言いました。デッサンは絵の基本だと思い込んでいた自分にとって、それは衝撃の言葉でした。では絵とはいったいなんなのでしょうか……気になる方は是非立ち読みでも。いやー、絵の話って書くのむつかしい。これが美術系の雑誌であったり、イラストレーションの専門誌だったら、読者もある程度限定されます。基本的に絵に興味がある人が読んでいるわけですね、そういう雑誌は。ところが文芸誌だと、絵に興味がない人にも読んでもらわなくてはならないのです。
最初に書いたものを担当さんに読んでもらったら、「なんか演説してるみたいだね〜」と言われ、全面的に書き直しました。通りすがりの皆様の足を止め、耳を貸してもらためには、まず主人公(私)に感情移入してもらわなくてはいけないのでした。そりゃそうだね。