田嶋コレクション後編
今週も引き続き、田嶋健さんアトリエ訪問記です。今は3度目の「こけしブーム」なのだそうである。確かに数年前から友達のイラストレーターの間でも、こけしが話題になっていた。マトリョーシカはいつぞや、その座をこけしに奪われていたようだ。もちろん田嶋さんはブームになる前からこけしを集めているわけだが、新婚旅行でこけしを40体買って来たりと、愛情の注ぎぶりは半端ではない。一口にこけしと言っても系統がいろいろあり、僕はまったく詳しくないが、とりあえず写真に納めてきたコレクションをお見せしましょう。
ま、こんな具合にたーくさんあった。いまのところ200を超えるくらい。先日も3人新しく仲間に加わったようだ。そんな中から一番値がはったものを見せてもらったら(トーシロはすぐ値段を聞いてしまい、反省)ちょとビックリすることがあった。なぜならそのこけしは僕のよく知ってる人が作っていたからだ。このブログの熱心な読者な方(たぶん10人ぐらいかな?)ならおわかりなる「水中、それは苦しい」の竹内直夫さん(パリ在住)という人がいる。その竹内さんの高校時代の同級生で、奥瀬恵介さんという人がいて、詳細をはぶくが、10年以上も前のある日、この奥瀬さんが当時、一人暮らしのオンボロアパートに僕を訪ねてきたのだ。色々語るうち、「奥瀬さんの実家て何やってんの〜?」と聞くと「おふくろがこけし作ってるよ」と言う会話があった。その当時はマトリョーシカの時代であって、こけしは「今に生きる伝統芸能」という感じではなかったのだ。「へー、こけしを作ってんだ…」という、正直に言えば、なんとなく寂しい感想を持ってしまったのだが…ご覧ください!このこけし&本の表紙を。奥瀬恵介さん作のこけしだったのだ。いつのまにこけし職人になっていたんだ。とにかくめでたい。そしてこけしコレクターの田嶋さんが大枚はたいて買ったこけしが僕の知り合いの作だなんて、なんというつながりであろうか。ははははっ!僕の友達が作って、僕の友達が買ったわけですよ、知らずして。というわけでこけしびっくりレポートはおわり。つづいて版画制作報告。これがプレス機です。100キログラムちかくあるので、床にも補強が必要。墨を入れる田嶋先生。手際がよくて気持ちいい。僕はみてるだけ。墨を塗った版。この版画は彫刻刀でバリバリ彫って作るのではなく、銅版画のエッチングのような技法で作ってます。田嶋さんがあみ出したマル秘テクニックなのだ。この状態は写真のネガの感じに近いのかな。この技法では彫ったところが線になって出て来るのです。限られた時間の中での仕事だったので出来映えはイマイチ(これは僕の原画のせい)だったけど個展には出すと思うので見て下さい。河鍋暁斎の肖像画のつもりです。プレス機で刷っているところ。このサイズの版画を手で刷るのは大変な力作業だが、これがあれば、グルグルっと回すだけでラクチンに刷れる。ただ家にこのプレス機を置く勇気が必要だが。最後にパチリ。あ、ちょっとおもしろい顔になっちゃったな。この時は田嶋さんが自作の版画を刷る準備をしているところ。黒は墨で刷るが、色はオイル系のインクで刷るそうだ。田嶋さん色々お世話になりました!田嶋さんのお友達の寺山さん、醤油豆ありがとうございました!あれは最高ですね。(田嶋レポート・完)