春日若宮おん祭
今売りの「芸術新潮」2月号で、6ページに渡り「春日若宮おん祭」を漫画でルポしております。この祭りは900年近く、ほぼ途切れることなく毎年続けられてきた御子神さまを接待する行事です。前夜祭、後夜祭的なものを含めて計4日もの間、イベント&芸能目白押しのスゴイ祭りなのです。
ところがこのルポ漫画、わたしはまったく取材に行っていないんです……。ご覧のように、最初のコマでも説明されていますが、芝崎みゆきさんが取材し、描かれる予定だったのです。ところが、なんと取材の最終日に、芝崎さんは右肩骨折(上腕骨近位端骨折)するという災難に遭い、絵が描けなくなってしまったのです。
そこでコンビニエンス・イラストレーター伊野に電話がかかってきたというわけです。年末進行の真っ只中、12月20日のことでした。
「しかし、取材もしていないのにどうやって描けばいいんだろう……」と心配になりましたが、芝崎さんは驚くほどしっかりとしたネームを描いてくださいました。
〈三角巾とコルセットで固定されながらーの、なんとかネーム(コマ割りとラフ)を、体を斜めにしながら、腰のはじあたりでムリヤリ描きました〉
↑これは芝崎さんのブログより当時の状況を語った部分の引用です。「腰のはじあたり」ってうまい言い方ですね。
資料写真は芸術新潮専属カメラマンH瀬さんがぎょうさん撮ってはります。編集部に出向いて、芝崎さんと一緒に取材に行ったT山さんとS田さんから、「春日若宮おん祭」についてみっちりレクチャーを受けます。芝崎さんが右肩骨折事件のあらましも聞きました。ちょうどその日は新潮社の仕事納めの日で、一年の激務から解放された編集者たちの談笑があちこちから聞こえてきたりと、社内にはゆったりとした雰囲気が漂っていました。
大晦日にはダウンタウンの番組を見ながらゆっくり酒を飲み、ぐっすり眠った後、新幹線(1月1日は空いている)で三重の実家に帰る……予定だったのですが、果たしてそんなことができるでしょうか。
とりあえず、下書きまでは今年中に終わらせておこうと思い、ダウンタウンの番組は見ずに、紅白歌合戦をラジオで聞きながら、仕事を続けました。
数時間前にT山さんから、漫画の補足指示とともに「年越しは会社と決めて珈琲飲む」という句がおまけでついたメールが来ていました。完全なるワーカホリックのT山さんは会社で一人コンビニ弁当を食べながら原稿書きに勤しんでいるようです。
ふとわたしは、何か大晦日的な気分を味わなければ、と急に思い立ち、買っておいた鯛の刺身と日本酒1合だけで、ささやかながら2016年の最後の晩餐をしました。でも、立ち食いそば屋に駆け込んで食事を取るように慌ただしく済ませてしまいました。そんなに慌てることはなかったのですが、やはりこの後も仕事をしなければいけないと思うと、自然とそうなるのです。
食後、また机に向かい、ラジオで相葉くんの司会にハラハラしつつ紅白を聞き、作画に励みました。なぜか「行く年来る年」の裏番組で「オトナの一休さん」が1本だけ再放送されるので、その5分間はテレビを見ました。
明けて2017年。8時起床。昼過ぎまで続きをやって、下書きを完成させ、さっぱりした気持ちで帰省しました。
正月は実家でのんびりしていました。だから漫画に描きこんだ「お正月返上」というコマは大げさなのです。芝崎みゆきさんはこれを信じて、非常に恐縮なさって、さらにブログでわたしを褒めまくってくれています。いやはやこちらこそ恐縮です。
芝崎さんにはエジプト文明やマヤ・アステカ文明について描かれた著書(今、『古代マヤ・アステカ不可思議大全』を読んでいますがと〜ってもオモロイです!)があり、文字のすべてが手書きです。それにくらべたら手抜きですよ、私のなんか。
芝崎さんのブログはこちらです(それにしても褒めすぎだ……)。
是非、作・芝崎みゆき、絵・伊野孝行『見てきたよ!ざざっと春日若宮おん祭』を「芸術新潮」でお読みください。