「僕おしゃ」終る
ナンバーワン自動車雑誌「ベストカー」で連載している藤田宜永さんの『僕のおしゃべりは病気です』は本日発売号をもって最終回。
藤田宜永さんは「文壇一のおしゃべり男」の異名をとる方で、私も一度酒席を共にさせていただいたことがあるが、確かにおしゃべりな先生であった。いや、本人がおしゃべりである以上にこっちの話をちゃんと聞いてくださる。どんな球でも確実に拾って返してくれる安心感。
「この人とは話しやすい……」そう思うと私は俄然好意を持つ。
話が面白い人というのは、面白い話を持っている人という意味でもあるが、他の人が独演会を聞いている状態になりやすい。それはそれで楽しいのだが、みんなの会話が盛り上がる方がより楽しいと思う。雑談で盛り上がるのが一番良い。
私は話がヘタなのに、たまにトークショーをやることがあり、聞きに来てくれたお客さん達と二次会に行った時に、何となくトークショーの続きみたいな感じになってしまってしまうのが困る。
自分の持ちネタに磨きをかけるのもテクニックであるが、とりとめのない雑談を盛り上げるのもテクニックがいるのだろう。藤田先生は後者のテクニックにそうとう長けているとお見受けした。
私は病気というほどでもないが、まぁまぁおしゃべりな方だし、みんなで楽しくしゃべっている中に黙っている人がいると気にかかってしまう。で、話を振ってみるのだが、いかにもわざとらしい感じが出てしまって、藤田先生のようにうまくはいかない。
ところが、時たま、自分が黙っている方に回ることもある。そういう時はどういう心境かというと、決してその場が楽しくないわけではない。縄跳びの中に入っていくタイミングがつかめないように、なぜか会話の中に割って入ることができないでいる。
だから誰かが話を振ってくれれば、しゃべるのだけど、何かこう、うまく回れないで、すぐにまた聞く側にもどってしまう。そういう時の雰囲気は何だろう。空気が読めてないというのともまた違う。会話に対して半身でいることが相手にもわかってるんだろうな。
後で「今日はおとなしかったね」と言われる。「いや、別に退屈してたわけじゃないんだよ」と答えるし、実際のところそうなのだが、おしゃべりってむずかしいなと少し思うのも確かなのだった。