伊野孝行のブログ

らくご・道具屋

ずいぶん前の仕事(去年の暮れ)のを今頃載せるなんてマヌケですが、マヌケが主人公の落語だから、ま、いいか。「ふでばこ」という季刊誌で描いた「道具屋」です。お江戸じゃ「古傘買い」だの「紙くず屋」だのいろんなリサイクル業者がいたんですってね。絵にしてみたよ。わかりやすいでしょ?さて「道具屋」という噺は古典落語ですが古くからある小咄を集めたオムニバス形式の落語だそうな。道具もランプとか出てくるから、時代設定は明治にしてみました。おじさんは、ろくでなしの与太郎に自分が『副業』でやっている”あること”をやらないかと提案した。「知ってるよアタマに『ド』の字のつくやつだろ?」「何だ、知っていたのか」「うん、泥棒!」「道具屋だよ…」「その鋸はな、火事場で拾ってきた奴なんだ。紙やすりで削って、柄を付け替えたんだよ」ランプの三脚は脚が一本取れて『二脚』になっている。お雛様の首はグラグラで抜けそうだし、唐詩選は間がすっぽ抜けていて表紙だけ…。

「まぁ、置いとけば誰かが買ってくれるよ。」「おじさん、この掛け軸、ボラが尾で立ってそうめん食べてるね」「バカ、そいつは鯉の滝登りだ。支那の黄河の中流には竜門というところがありをそこを登った鯉は竜となるという故事っがあってな…。」「なるほど、そういう性質のある魚なら橋からバケツで水を流し、滝だぞ!と鯉に叫んで、そこで登って来た鯉をつかまえよう!」と与太郎はバカなことを思いつく。が、まあ、それはどうでもいいとして、与太郎は市に行きました。もう、筋書きかくのめんどくさくなってきたので、実際に落語でもきいてください。いろんな人が買いに来るんだけど道具はみんなクズものばかり。ここで道具をつかった小咄で噺家さんは我々を楽しませてくれるところですね。「ちょっと、それを見せてくれんか?」「あ、それ…、足が二本しかないんですよ」「それじゃ、立つめえ」「だから、石の塀に立てかけてあるんです。この家に話して、塀ごとお買いなさい」「おい、その短刀を見せんか」「反対側から引っ張れ。抜くのを手伝うんだ。一・二の…サン!! ぬーけーなーい!」「抜けないはずです…! 木刀です!! 」「”抜ける物”はないのか?」「えーと…あ、お雛様の首!」「それは抜けん方がいいな。」と言って帰って行く。桂枝雀さんの「道具屋」のオチはこう。次に来た笛を見ていた客が笛の穴に指を入れたら抜けなくなった。与太郎は真のバカなので「抜けないから買ってもらえる」と思う。「豚カツでビール飲んで帰ろうかな」「着物つくろうかな」「米が切れてるな」「おっかあに芝居でもみせてやりたい」「家なおそう、瓦も畳もかえて」「それならいっそ家建ててもらお」とそこまで妄想していたときお客がいない!「あ!逃げられた!ドロボー!」「家を一軒盗まれた!」チャンチャン!ウィーンの旅行記書くのがめんどくさくて他のものをアップしとこうと思ったのに、よけいに面倒くさかったわ!