伊野孝行のブログ

風刺画ってなに?

『風刺画ってなに?』っていう展覧会が来週からはじまりますっ!

イマドキ、風刺画の展覧会なんて誰もやらないでしょ?
いや、なに、ネットにはいっぱい、風刺画というのか、ポンチ絵っていうのか、クソコラっていうのか、上がってるんですけどね。そうやってみんなで息抜きして楽しんでるんです。健康的なことではないですか。
でも、僕は風刺画って、好きじゃないんだよ。風刺画ってだいたいは面白くないんだもん。面白い風刺画は好き。宮武外骨の「滑稽新聞」とか。あ、全然関係ないけど、明治時代に「なまいき新聞」というのもあったみたい。内容は知らないけど、いい名前だ。
明治時代ってさ、言論の自由がそんなにないから、命がけじゃん。今だってそういう国は結構あるだろうけど、そこで風刺画描くのはスリルあるよね。日本で描いたって、なにも起こらないよ。だから面白くないのか。
いや、そういうことじゃないんだよな。なんだろう風刺画=政治風刺漫画だというイメージが僕は嫌いなのかも。基本的に毒のある絵は大好物です。
面白くない風刺画は、善悪二元論みたいになっちゃってるのがつまんない。
たとえば、個人と全体は必ず矛盾するでしょ。
もし無人島から10人が脱出するために、9人乗りの舟しかなかったら、どうするの?誰か一人選んで、みんなのために犠牲になれって言うの?それともみんなで船に乗らずに、無人島で飢えて死ぬの待つの?それとも沈むの覚悟でみんなで漕ぎ出すか…自分は船に乗ってる方か、乗れない一人の方か。基本的にこの構造は変わらないと思うんだけどな、国でも、地球でも。
そういう矛盾に向き合わなきゃいけないリーダーとして、トランプは最悪なやつだ。でも人間ドナルド・トランプを見てると、うっかり「ちょっと面白い……」って思っちゃうじゃん。金正恩とかも、実の兄を殺して、側近のおじさんも粛清して、戦国時代か!?ってやつだけど、本人見てると、うっかり「ちょっと面白い……」って思っちゃうじゃん。あと、北朝鮮の女性アナウンサーのアジテーションのような喋り方ってクセになるなとか。
深沢七郎さんはこう言っている「こっけい以外に人間の美しさはないと思います」。
人間は本質的に何の意味もない存在だけど、政治というのは正反対に意味を植え付けてくる。
僕が描くとしたらこんな風刺画かなぁ〜。
タイトルは「床屋政談」って言うんだけど、どうでしょうか…?
まぁ、ここに書いたのは、僕の意見であって、他のメンバーがどういう考えかは知らない。だから、展覧会のタイトルも『風刺画ってなに?』になってるわけでね。
政治家の絵なんて描くつもりなかったんだけど、DM用に先に一枚描かなくてはいけなくて、妙にサービス精神出して、描いちゃったよ……。
だから他の作品は、こういうのじゃない。風刺画って本当はもっともっと幅広いものなんだし。
26日のトークショーでは、いろんな風刺画的作品をスクリーンに写し出してしゃべる予定です。
というわけで、最近、毎回ブログではよろしく、よろしく、と言ってますが、今回もどうかひとつよろしくお願いいたします。