江戸アートナビ
東京都歴史文化財団がやっている「トーキョー・アート・ナビゲーション」というサイトで連載がはじまりました。安村敏信さんが1年かけて、東京に関係する江戸美術を紹介していきます。安村敏信さんは、ついこのあいだまで板橋区立美術館の館長をしておられました。板橋区立美術館は都内でもっとも不便な美術館として有名ですが、美術館の前に「不便でごめん」「素通りしないで」という垂れ幕がさがっていて、思わず笑みがこぼれます。とにかく不便な分、おもしろい展示にしようと工夫がなされている。それをやってたのが安村さんなわけです。
第1回目は歌川広重の《名所江戸百景 上野清水堂不忍ノ池》です。サイトはコチラです
ちゃんとしたお話は、上記のサイトで読んでいただくとして、毎回取材にはわたしも同行するので、ブログでは、個人的な感想を書いてお茶を濁していきたいと思います。
江戸時代の古地図片手に散歩する人もいますが、我々は浮世絵を片手に上野に来ました。《名所江戸百景 上野清水堂不忍ノ池》を持って清水堂から景色を見ると、だいたい同じような地形は眺めることができるが、ちがうところもある。くるりんと輪を描いた松がまだあった!のには驚いたが、なんだ、これは最近につくりなおされたものだった。
浮世絵は清水堂をすこし見下ろしているアングルで描かれている。たしかに清水堂を描きいれるためには、清水堂より高いところから描かなくてはいけない。でもそんな場所はまわりにない。もっと極端な例で言うと、鷹の視点から見下ろしている《名所江戸百景 深川州崎十万坪》などもある。そこまでいくとわかりやすいが《上野清水堂不忍ノ池》はてっきりスケッチを元に描いたもんだと思い込んでいた。現地に行かないとわからないことで、発見であった。しかも安村さんに聞くと「《名所江戸百景 上野清水堂不忍ノ池》の構図は、斎藤月岑(げっしん)がまとめた『江戸名所図会』《清水堂花見図》の構図をそのまま引用してるしね。」というではないか。ふだんわたしはよくパクリをするが、やはりパクリは全然わるいことではない!とあらためて思った。あと、「名所江戸百景」は縦構図。風景画で縦構図ってのはハナからまともな風景画は描かない決心がある、というかグラフィックな遊びですね、全部。
しかし…字が下手だ…。これでも3回くらい書き直しているのだが。