『短歌倶楽部』終わる。
UCカードの会員の人に送られてくる「てんとう虫」という雑誌で2016年からつい最近まで連載していた、歌人の福島泰樹さんのエッセイ『短歌倶楽部』につけていた絵です。
エッセイの多くは死んでいった友への惜別録でもありました。私の絵に冗談は一切求められてません。冗談なしの縛りが結構キツくて、毎回悩みました。
ギャグが禁じ手ならポエジーで勝負しなくてはいけないのです。ヘタなんだよね〜、僕ポエジー出すの。
ちなみに福島さんは過激で情念豊かな歌人、僧侶、ボクシングレフリー免許保持者です。「絶叫コンサート」で有名な方です。
今までにこのブログに載せた絵もありますが、最後ということで重複をお許しください。エッセイの中には毎回幾つかの素晴らしい短歌も挿入されていました。絵は短歌に合わせて描いたわけではないのですが、ご一緒にどうぞ。
悲しみのパンツは脱ごうあたたかに涙は溢れているのであった
あおぞらにトレンチコート羽撃けよ 寺山修司さびしきかもめ
桜吹雪く校庭を駆けゆきしまま黒きマントに歳月やふる一期は夢なれどくるわずおりしかば花吹雪せよ ひぐれまで飲む
敗北の涙ちぎれて然れども凜々しき旗をはためかさんよ
立松和平とのぼりし坂をくだりゆく四十年は逆巻く霧か
黙ふかく悲しみふかくやわらかき女体のごとく雪にまみれよ
目をつむればみなもに浮かび漂える夕日のなかの赤いサンダル
愛と死のアンビヴァレンツ落下する花恥じらいのヘルメット脱ぐ
鯖のごとくカブト光れり われ叛逆すゆえにわれあり存在理由【レーゾン・デートル】
ポーランドの雪原走る二筋の黒い鉄路の行く先知らず
中也死に京都寺町今出川 スペイン式の窓に風吹く
喇叭飲みしつつ歩けばびしょびしょに濡れてワイシャツ滴しずくを散らす
見上げれば青雲たなびきおりしかな雀荘「四万露」窓の彼方に
力道山そしてケネディー濛々と 時代を黒き霧が覆わん
脱ぐなむね ちぎれた君のアノラック俺が真水を汲 んでくるまで
一期は夢なれどくるわずおりしかば花吹雪せよ日暮れまで飲む
懐かしいなどとほざいて振り向けばタールのような夜がきている
女二人眠る部屋より春嵐はげしき 路地へ逃れ来たれり
魂の奥底ふかき挫折さえ乗り越えて来し霧のリングよ
愛しきは酒と稲妻、なやましく丼に酒あふれせしめよ
上を向いて歩けば涙は星屑のごとく光りてワイシャツ濡らす
野枝さんよ「虐殺エロス」脚細く光りて冬の螺旋階段
切なさや漣のように襞をなし押し寄せてくる憶い出なるよ
敗北の涙ちぎれて然れども凜々しき旗をはためかさんよ
升酒やあかるいひかりてらしてよ力石徹 ウルフ金串
笑うため仰向いて飲む冷酒や酒のコップ三杯さよならを言う
順序を逆に最終回から第1回までの絵を見ていただきました。今までも原稿の声に耳を澄ましそれに応じてタッチも変える方法でやっていました。それでも同じ連載の中でのタッチは統一していたものです。この連載に限っては、もはやそれすらどうでもいいのではないかと思い、何も統一しませんでした。