「鈴狐騒動変化城」①
さあ、さあ、お立ち会い。10月8日発売の田中哲弥・著、伊野孝行・絵の「鈴狐騒動変化城」の御披露目でござい!「鈴狐騒動変化城(すずぎつねそうどうへんげのしろ)」はお母様方に信頼される福音館書店がおおくりする現代児童文学の奇書!(カバーはクリックするとでかくなるよ)真昼の月が誘う童話の円月殺法!「むはははははは!」奇書をつくることに命をかけるブックデザイナー祖父江慎さん+鯉沼恵一さんによる見事な造本。「好きやなあいう気持は、なんかおもろいことになって楽しいなあ」おツネちゃんのこのひと言は、作者の田中哲弥さんをはじめ、本をつくった我々からのメッセージでもある。出来上がった本を手にとってそのように思いました。見開きの狐たち。このアイデアは「南総里見八犬伝」本のコレクターでもある祖父江慎さんの事務所で、まさに「南総里見八犬伝」の見返しに犬たちがいたのを見つけてパクったのだ!このように挿絵の入れ方もいちいち変えてある。
以下は、去年の暮れに、わたしに依頼があった時の、編集者岡田望さんからのメールを勝手に引用します。田中哲弥さんの世界をよく言い表わしています。
〈とにかく筋立てが絶品、狐も含めた登場人物たちも魅力的でぐいぐい読まされるのですが、なによりもこの作品はスラップスティックとして一級品です。私は、原稿を読みながら何度も声をあげて笑ってしまいました。まるで、時を重ね、数多の噺家が幾度となく繰り返し上演することで熟成されてきた古典落語のような品格があり、それでいて、少しも古くささを感じさせない、桂枝雀のアヴァンギャルドや志ん朝のモダンを併せ持っているように思います。同時に叙情にも富み、さらには技巧を凝らした文体や見事な描写が笑いを際立たせつつ、作品に一種独特の切れ味を与えています。
なんとか、この作品の持つ叙情性や切れ味、洒脱な味わいと拮抗し、また新たな魅力を引き出してもらえるような、笑いを説明するのではなく、作品に寄り添いながらも自立している(本のできあがりとして、草双紙や御伽草子の絵巻物のようなものをイメージしております)たとえば北斎漫画のような、そんな挿画をと思い、伊野様にご連絡差し上げた次第です。〉
メールにせかされるように、さっそく原稿を読んだわたしは、最後のページをとじて、両眼からあふれでる熱いものをぬぐうことも忘れて、こう思った。「これは絶対に、おもしろくせねばならない…」。
というわけで、来週は50点近くも描いた挿絵について触れたい。この本は稀にしかない傑作なので、明日書店に走るか、アマゾンなどでポチッとな、しても絶対に損はない!