伊野孝行のブログ

ヘタよりうまいものはなし

福音館書店の「母の友」に描いた挿絵から。「お父さんという生きもの」という特集。「イクメンという言葉が飛び交う昨今ですが、父親の真の役割とはなんなのでしょう。京都大学総長で霊長類学者の山極寿一さんや、落語家の春風亭一之輔さんにお話をうかがいます」という内容でした。それぞれの家庭での父親のありかたを、仕事帰りのおとうさんがしゃべってます…という設定で記事はすすみます。もりあがってきちゃって、ちょっとこぜりあいに。ケンカするのも仲がいいからね。落語にみる父と子ども。この絵は「初天神」。この絵は「子別れ」。この絵は「雛鍔」。
さて、今回は「ヘタうま」で行こうと思って描いたのですが、なんと難しいことでしょう。「ヘタうま」の表記は「ヘタ」がカタカナで、「うま」がひらがなです。湯村輝彦さんがそう書いているので、それが正しいのです。
リアリズムの方向で感じを出すのと、形をくずす方向でニュアンスを出すのと、どっちがむつかしいかと言えば、そりゃ、ヘタに描く方でしょう。
リアリズムの方向でいくのなら、なにせ元になる形はそこにあるわけですからね。形をくずすのは「当たり前」を裏切らないといけない。当たり前から開放されるから、ヘタな絵は気持ちいいのかもしれない。
落書きで描いてる時なんか、気持ちがスーッと出ていい形やいい線になることもあるけど、仕事だと、どこかに力がはいって硬くなるんですよね。ほとんどダメだなぁ。この仕事もぜんぜんうまく(ヘタに)いってない。
上手に描くのも大変なことだけど、絵は努力で解決できるもんじゃない、って思います。脱力。無意識。わたしはわたしを忘れたい。