座談会
文士シリーズ、今回は「座談会」。「座談会」というのを発明したのは菊池寛である。それはさておき、こんな座談会はもちろん実際あったわけではない。三島由紀夫が窓ガラスに張り付いてこっちを見ている。異様に足の長い石原慎太郎は正座ができなくてシビレがきている…。この絵は去年の「ボクラノ昭和時代」という展覧会に出したもので、僕は「三島由紀夫とその時代」というテーマで臨んだ。
石原慎太郎は「完全な遊戯」というのしか読んだことがないのだが、なんか凄い小説だったなぁ、とずっと心に残っていた。その正体をはっきりさせてなかったのだが、めちゃくちゃ面白くてためになるポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」の第72回『ダークナイト』の巻を聞いたとき、そこで触れられていて、なるほどそういう意図で書かれたものだったのかと腑に落ちた。井伏鱒二は何冊か読んだけどみんなおもしろかった。そのなかでは「多甚古村 」がとくに好きだった。伊藤整は「若い詩人の肖像」や「日本文壇史」、タイトルは忘れたけど「チャタレイ裁判」の記録など、実在の人が登場するものが僕にはとりわけおもしろい。とくに「日本文壇史」は、明治以降の文士達をあたかもついさっき見てきたかのように書いている。全18巻もあるので、伊藤整の芸をたっぷり堪能するには最高の本だ。そろそろ読み直そうかと思っている。今東光はこれまた僕の大好きな映画「悪名」シリーズの原作者である。勝新のシリーズは「座頭市」も「兵隊やくざ」もどれも痛快だが、つい見返したくなるのは「悪名」なのだ。勝新と田宮次郎の演技を見ているだけでうっとりする。勝新演じる朝吉親分は、勝新とちがって酒が全く飲めない。ライスカレーが好きでその食い方もいいんだなぁ。