直木賞、朱肉の蓋の思い出
いや〜涼しいとどんだけでも眠れますね。春になって寝まくっていたことを思い出します。
先日、都内の某一流ホテルで第161回芥川賞・直木賞の贈呈式が開かれ、私も招待していただいたので行ってまいりました。もちろん直木賞を受賞した大島真寿美さんを寿ぐために。
いったいどんなに盛大なパーティーなんだろうと想像するとそわそわしてきて、気がつくと、家を出る予定の時間よりもずいぶん早くに用意を整え終えてしまいました。
仕方なく、近所のカフェ(週に2回、ここのおじさんとジョギングしている)に行き時間を潰しました。カフェのおじさんも、会社員時代に芥川賞・直木賞のパーティーに出たことがあると言ってました。今「日曜美術館」のホストをやっている小野正嗣さんが受賞した時に仕事終わりにかけつけたそうです。
「今月のオール讀物で、『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』がまた掲載されるんで、挿絵を描いたんだよ」
とおじさんにオール讀物を見せましたが、
おじさんはろくに見もしないで、「パーティーに行くとさ、バッヂみたいな、シールになってるやつをもらって胸に貼るんだよ。わたしは捨てないで、朱肉の蓋に貼ってある」と店の奥から朱肉を持ってきて見せてくれました。
シールは文藝春秋のマークでしょうか。日本文学振興会のマークなのかな。
それはさておき、挿絵の中の劇場の看板に注目。なんて書いてあるでしょう。
会場となっているホテルに着くと、ロビーでひふみん(加藤一二三名人)が談笑していました。さすが超一流ホテル。
受付をすませると、おじさんの言うようにマークのシールをもらいましたので、シャツに貼りました。
ま、この氷の白鳥くらいはいいでしょ。
贈呈式が終わったあと、大島真寿美さんにご挨拶しようと思って列に並びました。実はお会いするのは初めてなのです。担当編集者の方とも。
この時にはじめて知ったのですが、2年ほど前に「小説すばる」で連載していた素人丸出しの退屈な私のエッセイ『ぼくの神保町物語』も大島さんに読んでいただいたみたいで、恥ずかしさで胸がつかえてしまいました。ゴホッゴホッ。今回の挿絵も大島さんのご指名だったと聞き、心の中で喜びの舞を踊りました。
大島真寿美先生、改めておめでとうございます!
国立劇場で文楽を見るときは、いつも後ろの方の席なので、人形を近くでまじまじと見たことはありませんでした。よく見ると、お三輪ちゃんの口から針のようなものが出ています。なんでしょう?かわいい顔に似合わない凶器。後で友達に「針は手ぬぐいや袂を咥えさせるためのものだと思う」と教えてもらいました。しかし、きれいに作られていますよね〜。
一回くらい一番前の席で観たいもんだわ。
華やかな世界から貧乏くさい家に帰って、まず私がしたことはシャツの胸からシールを剥がし、朱肉の蓋に貼りなおしたことです。請求書にハンコを押すたびにこの夜のことを思い出すでしょう。
おわり。