伊野孝行のブログ

ウクレレ♪デコレレ♪

銀座8丁目のリクルートG8でおこなわれる恒例のTIS(東京イラストレーターズ・ソサエティ)の展覧会も今年で21回目となるそうな。今年のテーマは「ウクレレに描く」です。

最近、ずっと弾いてなかったギターをまた触り出すと同時に、音楽も前よりよく聴くようになった。ぼくは面白いとおもったら、マニア道に走るより、不見転で自分でもやりたくなる。鑑賞者の立場だけにいるのと、ヘタでも自分でやってみるのとは、大河を間に挟むくらいの差があると思う。べつに楽器などできなくても口笛でも音楽はできるわけだし、大昔のように実作者、演者と鑑賞者が別れていない方が「芸術」の意味、必要性がより理解できるはずだ。

…と、まぁ、またデカイことを言ってしまったので、画像をアップしにくいが、わたしの出品するウクレレはコレだ。…なにとぞ、お手柔らかに。ハワイのお土産風に描いてみました。だから大量生産風にカンタンな絵…。

もう、終わるらしいテレビ番組「若大将のゆうゆう散歩」が好きで、たまたまつけてやっているとよく見ていた。庶民派の地井武男のときとちがって、加山雄三はお城の殿様がおしのびで城下町にやってきているような感じでいい。我々は下々の者だとつい思っちゃう。そう思わせる天真爛漫さ。きっと加山雄三は自分のことは庶民だなんてこれっぽっちも思ってないから、そのふるまいが自然だ。

加山雄三は毎回、散歩の感想を書にしてしたためるのだが、あまりよくない。散歩に飽きた?ときに突如はじまる料理コーナーの腕前もほほえましい。得意とされている絵も、真面目な絵なんだなぁ。ところが、あるときウクレレを作っている工房を訪れたとき、ポロロ〜ンと一曲やったのが、ものすごくうまかった。よかった。ぼくは加山雄三のつくる歌が好きだ。学生時代の美術部の部室になぜか加山雄三のテープがあり、なんども聴いていた。

そして加山雄三もまた、自分がおもしろいと思ったら、すぐやってみるタイプのひとだった。番組をやめる理由も、80歳までにつくりたい船があるとか…。

というわけで「デコレレ展」2015年9月8日(火)~ 10月7日(水)クリエイションギャラリーG8(東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F)でやってます。

会期中にイベントもあり。すべて入場無料。
イラストレーターが描くウクレレ148本「デコレレ♪」の詳しい情報はコチラ!

暑中お見舞い

しょちゅうおみまいもうしあげます

いや〜夏風邪をひいてしまって、夜になると咳でむせて眠れない。寝返りを打つだとか、ツバを飲み込むだとか、ちょっとしたことがきっかけで咳がでてこようとする。ときどき身を起こして、「はぁ〜っ…」とため息をつくとまるで病人じみているが、熱もなければ、ノドも痛くない。ただ咳がでるだけ。それも肺の方からでてくるのではなく、ノドのすぐ奥からでてくるので、肺からヒューヒュー音もしない。

咳のことを気にしてると、暑いほうのことをすこし忘れているのであった。

第53回 高橋五山賞

このたび、第53回 高橋五山賞を授賞いたしました。パチ!パチ!パチ!

〈高橋五山賞は、教育紙芝居の生みの親、高橋五山氏の業績を記念して、1961年に創設された。ただ単に、五山賞ともいう。年間に出版された紙芝居の中から最も優秀な作品に贈られる。高橋五山賞審査委員会(財団法人文民教育協会子どもの文化研究所)主催。〉wikipediaより。

受賞作品は「ごん助じいさまとえんま大王」という去年出た紙芝居で、わしおとしこさんの脚本です。紙芝居の世界は、わたしもまだ全然知らないと言ってよく、「ごん助じいさまとえんま大王」が2作目でした。1作目は「おおきいねこちいさいねこ」で、2作とも教育画劇の三原さんという方にたのまれて描いたのでした。作り終わるたびに、「う〜む、まだまだだなぁ」と我ながら課題を感じていたので、賞をもらってびっくり。聞けばとっても歴史がある賞で、該当者なしの年もあるらしい。

「時期尚早では…」と思いました。講談社のさしえ賞のときもそう思いました。しかし、賞というのはタイミングでもらうこともあるし、必ずしも実力がついたからといってもらえるものでもないので、ありがたく頂戴いたしました。もちろんわしおとしこさんの脚本のおかげでもあります。

というわけで去る7月7日、アルカディア市ヶ谷「大雪の間」でおこなわれた贈呈式&お祝いの会に出席してまいりました。実演をしていただく。自分の紙芝居をちゃんと見るのははじめて。いちばん前の席(2メートルくらい離れている)に座っていたが、紙芝居って距離があるからけっこう小さく見えるんですね。脚本を担当された、わしおとしこ先生と(わしおさんが脚本賞でわたしが画家賞)。お祝いの会の途中、わたしの斜め前に座っておられるこの方に、眼が釘付けでありました。豆絞りをこんな粋にあしらうなんて…。このお方は今回より創設されました右手(うて)賞を授賞された梅田佳声先生であります。紙芝居の実演家であります。大スターの業績を寿(ことは)ぐ雰囲気が会場にあふれておりました。わたしは紙芝居のことは何もしらない若輩者でありますが、この方のたたずまいを拝見しただけで、たちまち芸の奥深さを感じ取ったわけでございます。「順番がわかんなくなっちゃたよ…」とボケをまじえながらの実演も披露してくださいました。笑いと話芸に会場にいた全員は魅了されました。街頭紙芝居と教育紙芝居の枠を超える芸術家。わたしの頭の中には「芸能」という文字が太くくっきりと浮かびました。梅田佳声先生を師とあおぐ飯野和好さんもお祝いにかけつけていらっしゃいました。賞状とお花と金一封。ありがとうございました。わたしの知らない紙芝居の世界に触れた一夜でございました。

(ちなみに、紙芝居は日本にしかないって知ってました?そういえば、外国人が紙芝居やってる写真や映像は見たことないですもん。紙芝居は裏にストーリーが書いてあるのが発明なんですけど、それはあの山川惣治さんが考案したのだとか。)
「ごん助じいさまとえんま大王 」はポチッとなでも買えます。

 

 

ちくちく美術部・他

断固毎週火曜日更新!などと言っておきながら、先週はGWまっただ中ということもあって、さぼってしまった。自分で決めてるだけの約束事だから、さぼってもどうということもないし、反応もないから、いっそ半年くらい更新しなくてもいいんではないか…と思ったりもするが、なにはともあれコツコツやるしか能がないのでしばらく続けてみよう。

芸術新潮で連載がはじまっている。「ちくちく美術部」というマンガによる展評だ。フキダシの中のセリフを抜いた状態でお見せしよう。今、本屋に並んでいるからよかったらお読みください。わたし一人でやるのではなく、アートテラーの”とに〜”さんといっしょにやっています。(アートテラーとはアートの語りべのことで、この職業は本人曰く、世界で一人しかいないという…。とに〜氏は元吉本芸人という経歴。お会いしたらたいへんな好青年でした。)

副編集長のT氏から「とに〜さんといっしょにマンガで展評やりませんか?ちくちくするやつやりたいな〜」とそそのかされてはじまった。わたしはなにも好きこのんで悪名を売りたいわけではない。

いや、別にちくちく言うことが本義ではなく、自分の眼と脳をとおして見た感想をのべているだけのことです。わたしの場合は自分も絵を描くから「そんなこと言ってるオマエはどーなんだよ」というツッコミは必ず入る…余計に言いにくいっちゅーの!

以前、あるライターの方がこんなことを言っていた。「昔は編集者から、コレ(本、CD、映画、芝居、展覧会など…)を見て好きなように書いてくださいって言われてたのに、今は、コレをいいように紹介してください、と言われる。」と。広告掲載料大事のためか、はたまた広報の台頭か。いずれにしろ読者がおいてきぼりになって、雑誌から読み応えがなくなってはつまらない。

今はネットでみんなが意見を発表できる時代だけど、雑誌ならではの切り口や書き手の芸でもって、払ったお金以上の楽しみを読者様にお返ししたい、そんな気持ちでやっていきます。どうぞよろしく。

さて、ちょっと前にお知らせした「妄想ロックTシャツ」が通販で買えるとな!

妄想ロックフェスTシャツ通販サイトはコチラ!

帽子に眼鏡というわたしと同じ格好のモデルさんだが、着た雰囲気が自分とはまるでちがう。やはりわたしのTシャツはおしゃれではない…。

Tシャツ。その他お知らせ

急に春めいてきた。そろそろ亀(クサガメ12歳)が冬眠から目覚める頃だと思って、家の裏の日陰においてあるゴミ箱(ポリバケツに深く水と落ち葉を入れてある亀の寝床)の様子を見に行っていた。

半月ほど前は首をのばしてスヤスヤ眠っている様子だったので、起こさないようそっとしておいた。一週間前にも、のぞいてみたが、同じ姿勢で寝ていた。で、昨日見てみても、同じ姿勢で寝ていた。……ひょっとして…?棒切れでつついてみたら、同じ姿勢のまま水のなかでひっくりかえった。カメキチは死んでしまった…!

冬眠中は仮死状態に近いから、眠ったまま昇天したのだろうか。水の中からとりだして、つついたり、ひっぱったりしたが、もちろん反応はなく、固まっている。どれくらい前に死んだかわからないが、皮膚などは生きているときとかわらないさわり心地であった。ほんとうに死んでいるのか不思議に思うくらいみずみずしい。なきがらは庭に埋めた。飼いはじめたときはゼニガメだったが、20センチくらいに成長したので、ずいぶん大きくなったなぁ、と思いながら穴をひろげていった。

さて、「お知らせ」というのは、亀が死んだことをお知らせしたかったのではない。パソコンに向かって、春ですね、そろそろTシャツが着れる季節ですね、と書こうとして脱線してしまった。お許しあれ。

目白のブックギャラリー〈ポポタム〉でTシャツのグループ展に参加しています。(注:ポポタムは水曜木曜がお休みです)
「妄想ロックフェス2015」はコチラをクリック
「妄想ロックフェス」というように妄想バンドTシャツを作る、ということだったので、架空のバンドを設定しなければいけない。そのへんはTシャツの絵柄を決めてからテキトウにでっちあげておいた。タヌキがやってるバンドにしてCDケースの中には葉っぱを入れておきました。

「BIBIRI TANUKI は狸が化けてやっているとも、狸にばかされた人間がやっているとも言われるが、ほんとうのところはわかっていない。
「UOSUOM」というCDを出しているが、プレーヤーに入れても音が出ず、おかしく思ってイジェクトボタンをおしたら葉っぱがでてきた、という話もある。」

Tシャツは、サイズはもちろん、布の色、インクの色たくさんの中から選べます。ぜひ、この機会にTシャツをお買い求めいただきたく、一筆啓上申し上げた次第。北尾トロさんがライター仲間とつくっている「レポ」で連載がはじまりました。「頭にちょんまげをのっけてればいいってもんではない」というタイトルのエッセイです。でも「レポ」は次の20号が最終号なので2回だけの連載です。そのタイミングで連載がはじまるのもすごいが…。今号の表4「山田うどん広告」は石野てん子さんです。石野てん子さんって◯◯さんのことですけどね。会社が慎重社なだけに、そのへんは慎重なんです。(わからない人にはなんのことかわからないとおもいますけど)「江戸アートナビ」が更新されました。こちらも今回が最終回。

ブランドの影にゴーストライターあり?の巻

昔は工房で絵を描いていたわけですから、誰々の作ということ自体決めるのは難しいし、サインと判子だけ先生で、あとは弟子が描いている場合だってあったでしょう。酒井抱一の弟子には鈴木其一がいたわけですから、弟子と言っても筆が劣るわけではない。鈴木其一が描いた絵に、酒井抱一のサインと判子が入っているという「ニセモノ」もあるかもしれない。そういうものはニセモノとは言わないかもしれないが、「伝・酒井抱一」ということになるのだろうか。江戸時代にはニセモノを専門につくる人も多数いて、今ではあまり知られていないような絵描きの絵も、かならずニセモノがあるという。

たとえば、ある有名が絵師が亡くなるとする。どこからか手をまわして、絵師の判子を手に入れれば、判子はホンモノのニセモノの絵が仕上がる。…そのようなわけで、安村先生も「ホンモノかニセモノかほんとうのところは誰にもわからない。自分がいいと思ったら、それでいい」というようなことをおっしゃっていた。ぼくもそう思う。

茂田井武サイコー!

↑「茂田井武の肖像2015」/只今〈えほんやるすばんばんするかいしゃ〉にて展示中

茂田井武は、見るたびに発見があり、自分にもできるんじゃないかとその気にさせてくれるが、結局、ダメだ、描けっこない!と絶望させる最高の画家の一人である。自分にもできるんじゃないかとその気にさせてくれるのがミソである。鑑賞者の立場から創作者の立場へとうながす力はどこにあるのだろう。

茂田井武の自由さったらない。「型」というものは絵の邪魔にしかならないと思えてくる。どの絵にも共通してあるのは、偶然できあがってしまったかのようなみずみずしさ。型にたよって描けば手際がよくなり、成功率は上がるが、自分にはもう絵の未来がわかっている。手際の良さはときに警戒しなくてはいけない。

いざ筆をもって紙に向かえば、頭の中で予想していなかったことが画面の中ではじまる。たいがいはそれを無視するか、はなから想定外のことが起こらないように下書きを作っておくかして、効率をあげる。じつは、案に相違して起こる出来事の中に絵を描く楽しさ(したがって苦しさも)があることは、描く人なら誰でも知っているだろう。〆切りやラフの提出がなかったら、すべての絵はそうして描いた方がスリルがあって楽しい。

「童画」の絵描きとして知られる茂田井武だが、子どもはみんな鑑賞者であり創作者なので、絵にたいして二つの回路をもっている。ぼくは茂田井武の絵をみて絵を描きはじめたわけではないが、茂田井武の絵を見るたびに「おれもやってみたい」という、はじめてつくる側にまわる時のような気持ちになる。きっと茂田井武の絵の中には二つの回路を刺激する何かがあるにちがいない。

↑「茂田井武の肖像2010」/拙著「画家の肖像」に収録

茂田井武を絶賛しながら、自分が描いた「茂田井武の肖像」ばかりアップしてしまったが、興味を持った方は是非、本を買うなり実物を見るなりしてファンになってほしい。

ちょうど今、銀座の〈ノエビア銀座ギャラリー〉で小規模ながらいい展覧会をやっています。前期1月13日〜2月20日後期2月22日〜3月27日。

「茂田井武展 – 記憶の頁 -」はコチラ!

それにあわせて高円寺の〈えほんやるすばんばんするかいしゃ〉では2月13日~ 24日『茂田井武 – トン・パリ祭』を一階ギャラリーで開催中。こちらでは茂田井のグッズやトリビュート作品が展示販売されています。

《 茂田井武トリビュート作品・参加作家(順不同/敬称略) 》
及川賢治/吉田尚令/山福朱実/松成真理子/ささめやゆき/岡田千晶/渡邊智子/渡辺美智雄/高畠純/堀川理万子/伊藤秀男/たんじあきこ/どいかや/杉浦さやか/いぬんこ/伊野孝行/芳野/イナキヨシコ/霜田あゆ美

『茂田井武-トン・パリ祭』at〈えほんやるすばんばんするかいしゃ〉はコチラ!

この二つの展示の企画はもとより、近年刊行された茂田井本などを中心になって作っておられる広松由希子さん(児童書評論家)と五十嵐千恵子さん(児童書編集者)のトークショーが2月21日〈日本出版クラブ会館〉であります。

トークイベント『童画家 茂田井武について』@レラドビブリオテックはコチラ!

というわけでみなさま、2月は茂田井武月間でございます。

茂田井武を紹介するページ MUSÉE MOTAI