伊野孝行のブログ

スポーツは、たのしい

福音館書店の「母の友」2月号の特集「スポーツは、たのしい」に絵を描いてます。スポーツ評論家の玉木正之さんのおっしゃることにいちいち納得。そもそもスポーツは「誰もが自由に楽しめるもの」。それなのに、間違った解釈で日本に定着してしまったようです。玉木さんのような先生がいたら、私もスポーツ嫌いにならずにすんだかもしれません。スポーツ1特集の見開き扉では、スポ根マンガの世界観を揶揄することが私の使命。「巨人の星」的な運動会の様子です。2色ページの特色は暖色系にしてもらうようにお願いしました。暖色系は肌色にも使えるので、今回のような水彩のタッチのときは描きやすいのです。また、水彩タッチを選んだのは、ペンのタッチにしてしまうと、それこそ「巨人の星」に近すぎてしまい、距離が出ないからです。作画のタイミングでは特色の色がまだ決まっていなかったので、とりあえず、マゼンタと墨で描いて渡しました。スポーツの1たしか大学の2年まで体育の時間がありました。最後の授業が終わった時、長年イヤだった体育からやっと解放された気分でした。私は体を動かすのは嫌いではないし、このブログでも何度か書いたことがありますが、短距離ならクラスで一番足が早かったのです。でも球技がすべてダメでした。そして球技というのはだいたい団体戦で、私の失敗が即失点につながったりします。肩身が狭いです。ドンマイ!ドンマイ!と言われても、ちっとも楽しめません。球技は自分はクラスのお荷物なんだ、ということを植え付けてくるのです。スポーツ2スポーツ2と3スポーツ3野球なんかまったく興味もなかったけど、小学生のときは、それを言えませんでした。子どもの頃のアルバムを見ると、阪神タイガースや中日ドラゴンズの野球帽をかぶっています。大人になって、好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、とはっきり言えるようになって、ほんとに良かったです。今は酒席などでサッカーの話になると、最初は黙って聞いていますが、頃合いを見計らって相撲の話を切り出します。スポーツの4 スポーツ4上の絵は、ご存知の方も多いと思いますが昔はオリンピックで芸術も競っていた、というお話につけたものです。

話は自分のことに戻りますが、相撲は得意でした。なぜなら、相撲はテレビでよく見ていたから、体の使い方がわかるのです。前みつ(前まわし)のどのあたりを取って、どうカイナをかえすと、相手は私のまわしが遠くなるのか、などテレビ観戦しているうちに自然に頭に入ってきているのです。同級生は相撲を熱心に見てませんから、この知識の差があるうちは勝てるのです。ただ、みんなが真剣にやりだしたら、すぐに勝てなくなるとおもいます。ちなみにまわしをつけたことはありません。ジャージ姿で遊びでやっていただけなので、つり上げられると、おケツにくい込みまくります。スポーツの5スポーツの6上の絵は種目の起源についてのコラムのために描いたものです。デザイナーさんがおもしろいアレンジをしてくれました。スポーツ5スポーツ6古い書物のような古色をつけてくれて、本の中の本、という体裁になっています。まわりの余白の部分も誌面です。

スポーツには、絵のように「ヘタうま」ということがあるんでしょうか?ヘタだけどうまいねー、そんな風に言われたら、私もスポーツが好きになれそうです。

東海道五十三次・完結編

みなさま、あけましておめでとうございます。本年もよろしくおねがいします。年賀状新年一回目の更新は、お正月らしく東海道五十三次です。39宿場まで進んでいたので、40宿場からゴールの京都まで、のこり一気に掲載しましょう。この東海道五十三次は「日本薬師堂」でサプリメントを買うごとに送られてくるカードなんですが、今もやっているかどうかは知りません。なにしろ描いたのはけっこう前なんで。

四十宿場目「鳴海」

四十宿場目「鳴海」

四十一宿場目「宮」

四十一宿場目「宮」

四十二宿場目「桑名」

四十二宿場目「桑名」

四十三宿場目「四日市」

四十三宿場目「四日市」

四十四宿場目「石薬師」

四十四宿場目「石薬師」

四十五宿場目「庄野」

四十五宿場目「庄野」

四十六宿場目「亀山」

四十六宿場目「亀山」

四十七宿場目「関」

四十七宿場目「関」

四十八宿場目「坂下」

四十八宿場目「坂下」

四十九宿場目「土山」

四十九宿場目「土山」

五十宿場目「水口」

五十宿場目「水口」

五十一宿場目「石部」

五十一宿場目「石部」

五十二宿場目「草津」

五十二宿場目「草津」

五十三宿場目「大津」

五十三宿場目「大津」

「京師」

「京師」

今までの東海道五十三次は下記をクリックすると見られます。
東海道五十三次その①
東海道五十三次その②
東海道五十三次その③

人生曼荼羅

今年、最後のブログ更新です。

最近はじまった人生相談の連載の絵です。プレジデント社の「WOMAN Online」というwebページでやってます。ひとつの人生相談に対して、本田健さんと河崎環さんのお二人が答えております。わたしは第三の回答者のつもりで絵を描いてます。一見、茶化しているような絵に見えるかもしれませんが、心から親身になっているのです。

【今回のご相談】パートナーが「君を手伝う」と言いながら、自分の世界観や意見を押し付けようとします。私は全く逆の意見を持っていることが多く、「自分はこう思う」と説明しても、「君は頑固だ」とか、「世界を知らない」とか、上からの態度をとるため、けんかになります。別れたほうがいいのでは、と何度も思いました。どうしてこうなるのでしょうか。私がそう言わせているのでしょうか?b人生曼荼羅3

【今回のご相談】テレビ、新聞、ネットなどで流される暗く悲しいニュースには、どう接したらいいでしょうか? そのようなニュースは、今までできるだけ避けてきました。感情移入して、悲しさややり切れなさを感じた方がいいのでしょうか?b人生曼荼羅4

【今回のご相談】私は夫と2人の男の子(8歳と6歳)と暮らしています。夫は、誠実で温厚なとても善良な人で、休日には食事を作ってくれるなど、感謝することも多いです。でも、一緒にいて楽しくないのです。将来パートナーと2人の暮らしになったときのことに危機感を感じています。これからどうしたらいいか、アドバイスをお願いします。b人生曼荼羅2

【今回のご相談】「ワクワクすることをやってみる」とよく聞きますが、そのワクワクすることが何かが分かりません。どうしたらよいでしょうか?b人生曼荼羅12-1

【今回のご相談】年が明けたら夫の実家に挨拶に行かねばならないと思うと気が重いです。結婚して10年弱経つのに子供ができないことを、義父母は非常に不満に思っており、帰省の度に義母から「孫はまだか」「なぜできないのか」などとしつこく言われるためです。もともと夫は子供嫌いで、私もそれほど欲しいと思っていないため、夫婦ともに子供をつくるつもりがありません。それなのに、なぜ私ばかりが責められなければならないのでしょうか。

……というようなかんじで、週に一回更新されております。相談受付中です。どしどし悩みごとを打ち明けましょう!下記をクリックすると、連載ページにとべます。

本田健と河崎環の「人生曼荼羅」

当ブログをのぞいてくれたみなさん、今年一年ありがとう!どうぞよいお年をおむかえください。来年は5日から、また性懲りもなく更新をはじめます。ではまた会おう!ぐわはははははは〜〜っ!

グリーン車の思い出

連載開始のお知らせをしようしようと思っているうちに最終回をむかえてしまった、雑誌「wedge」の「社長さんのための国際法務講座」。6回で終わりと聞いたので打ち切りではありません。しかし、半年なんてあっという間。

おもに日本の企業が海外で仕事を展開していく時に、どのようなことに注意したらいいのか、具体的な失敗例をひいて弁護士の先生がアドバイスをしてくださる。

記事の内容を調べて書くのが面倒なので絵だけ載せます。第1回第2回第3回第4回文字修正第5回最終回

「wedge」はJRがスポンサーなので新幹線のグリーン車に乗ると、それぞれの席に置いてある。それを知ったのは去年の正月3日のことだった。

津から近鉄で名古屋に出て、名古屋から新幹線にのりかえて東京に戻ろうとしたら、新橋のあたりで火事があったらしく、数時間にわたり新幹線がストップしていたことがあった。

ダイヤは完全に乱れていたが、私が名古屋に着いてしばらくした頃、ようやく新幹線は動き出した様子。アナウンスも特になかったが、いちばん早く動き出しそうな新幹線に勝手に乗った。指定席の普通車両は人でいっぱい。「こりゃ、指定席とか関係ないわな、どうせなら、この機会にグリーン車に乗ってみようかな」という厚かましい機転がはたらいて、ズカズカ進んでいくと、グリーン車にはほとんど人がいない。日本人はなんてきっちりした人たちなんだろうか。「絶対、切符なんか見に来ないって!みんなバカだなぁ……」そう思いながらも、自分だけズルをしている気になってしまう。「いや、これはズルじゃないんだもん。いや、ズルなのかな?……」と微妙な心持ちだったのだが、新幹線はまもなく走り出し、グリーン車もほどなく席が埋まった。座席に置いてあった「wedge」をパラパラめくっているうちに、すっかり普通車とはちがう座り心地に気持ちよくなり、実家からもってきた弁当を食い出した。そして、予定より10分ほど早く東京に着いてしまったのだった。東京の自宅に戻りニュースを見ると、お正月早々Uターンラッシュの最中に起こったとんだ災難、という報道になっていた。事実そうだったのだが、なんて自分は運がいいのだろうと思った。

真田幸村修正かわってこちらの絵は「てんとう虫」というUCカード会員誌で連載していた「賢人の選択」という泉秀樹さんの連載の挿絵。絵は真田幸村と徳川家康。この連載も終わってしまった。カックンショック……と思っていたところ、また同じメンバーで、今度は歴史の中の女性をテーマに「女もすなり益荒男日本史」というのがはじまった。よかった、よかった……。第一回目は日野富子。絵だけ見てもなんのこっちゃようわからんとは思いますが。日野富子1そうそう、今年もタンバリンギャラリーの、タンバリンに絵を描く企画展に参加しています。今日からはじまります。売ってます。1万円〜3万円までの間で好きに値段をつけてよい、ということなので、もちろん1万円にしております。いつもは金太郎が熊に負ける絵ばかりかいているので、たまには金太郎が勝ったところです。タンバリン金太郎金太郎が負けっぱなしというのはこんなのです↓

不滅の名作『金太郎全敗物語』

35歳のトリビア

女性誌「ドマーニ」からの仕事依頼。たまに女性誌から仕事が来るとうれしい。イラストレーターとは幅の広い絵が描ける人のことだと自分は思っているので、毛色の違う仕事は大歓迎なのだ。…といっても、絵はふだんとあまり変わらなかったりして…。今月のドマーニには「35歳の決断」という新書サイズのオマケがついていて、そこに描いた著名人の35歳の頃。1紫式部は35歳で宮中に就職。それまでは専業主婦でした。2と3津田梅子は35歳で「女子英語塾」を設立。

キューリー夫人は35歳でラジウムの分離に成功!森英恵さしかえ35歳、森英恵はパリでシャネルスーツと出会い、デザイナーを続けることを決意!5と6北条政子は35歳でのちの3代将軍、源実朝を出産。

ダイアナは35歳でチャールズ皇太子と離婚。7国際弁護士のアマル・クルーニーは35歳でジョージ・クルーニーに見初められ、熱烈プロポーズで結婚。ジョージの似顔絵は何回やりなおしても井上順になってしまい、今回いちばん苦労した。8と9と10

スピルバーグがETを作ったのが35歳。

オードリー・ヘップバーンが念願の「マイフェアレディ」に出演したときが35歳。

宮澤賢治が「雨ニモマケズ」を書いたのが35歳。

手塚治虫がアニメ「鉄腕アトム」を制作したのが35歳。12メリル・ストリープが「恋に落ちて」に出演していたのが35歳の時。13と14ベートーベンが皇帝になったナポレオンに激怒して「英雄」の楽譜を破り捨てたのが35歳。そのナポレオンは35歳でフランスの皇帝に即位。

ゴッホがひまわりを描いたのも35歳。ゴッホと画家同士の共同生活をはじめたものの、2ヶ月で解消したゴーギャンは、株の仲買人をやめて画業に専念しはじめたのが35歳のときだった。

さて、わたしは35歳のときに何をしていただろうか。ビッチリ週5でバイトしてましたね。

絵の仕事は全然なかった。日下潤一さんに「君、ゴッホ好きやったら本作らへんか?」と言われその名も「ゴッホ」という黄色い表紙の本を作った年でした。

同時に、HBギャラリーの唐仁原教久オーナーが、あるマンガ雑誌に持ち込みしてボツにされたぼくの漫画原稿を見て「お前のマンガ、おもしろいよ、本にしようよ」と言ってくれて「こっけい以外に人間の美しさはない」という本を作ってました。ほんと仕事がなかったから、そういう話はありがたかった。

谷崎 冬の伊野まつり

絶賛発売中の芸術新潮12月号「谷崎潤一郎の女・食・住(にょしょくじゅう)」は、没後50年、生誕130年を記念した情痴の文豪大特集です。まだ読んでない人は女房(旦那)を質に入れても買いに行こう!
この不敵な微笑み…「大谷崎」と称される小説家の肖像です。丸でかこまれたところに注目していただきたい。〈死にいたる夫婦のエロス「鍵」を絵で楽しむダイジェスト版も掲載!〉とあります。特集のタイトルページの前に、「鍵」の絵物語が6ページに渡って載っています。これは今から5年前、丹下京子さんとHBギャラリーで開催した二人展の絵です。夫の日記を私が、妻の日記を丹下さんが絵にしています(誌面にあわせてすこし場面は絞られています)。この展覧会は今をときめく大スターイラストレーター丹下さんの出世の糸口であります。後世のために言っておきますが、「鍵」を思いついたのは私です。そして丹下さんの絵が良すぎたので、私は引き立て役にまわってしまいました。はからずも奉仕してしまった形になったこの展覧会、男が女に奉仕するという形は、実は谷崎文学の本質に合致しているわけです。谷崎家夕餉之掟
一.六時半開始 遅刻厳禁
一.全員必ずよそゆきに着替え、化粧もバッチリ
一.御馳走は食べきれぬほど並べよ

谷崎家の夕餉にはこのような掟があったのです。見開きの絵で再現してみました。料理を描くのが面倒くさかったです。谷崎先生の食いしん坊エピソードは「台所太平記」で挿絵を担当していた横山泰三のパロディで。「谷崎潤一郎先生の柿の葉鮨談義」は和田誠さんのパロディで。特集以外でも、毎度おなじみ、アートテラーのとに〜氏との展評連載「ちくちく美術部」も描いてます。今回はふたつの黄金展をみくらべてちくちくしています。これは伊賀美和子さんによる谷崎ヒロイン10選の作品。いいですね。谷崎のナンセンスな面とマッチしてます。芸術新潮ではこれまでも、夏目漱石、川端康成、小林秀雄、三島由紀夫と文豪特集はありましたが、今回の谷崎潤一郎は「美術」という切り口ではないので、今までの文豪特集とはひと味ちがってます。編集部の工夫が見て取れるおもしろい誌面になっています。