伊野孝行のブログ

「WINE-WHAT!?」

「WINE-WHAT!?」という雑誌でマッキー牧元さん(雑誌「味の手帖」の編集顧問で主筆)のコーナーに絵をつけています。この連載はワインのエチケットもキャップシールも全部はがして、つまり、何の銘柄かまったくわからないようにして先入観なしにワインを飲むというものです。飲みながらマッキーさんが頭に描いた妄想?が綴られています。これは第1回目の絵。マッキーさんとはお会いしたことはなくて、画像検索で似顔絵を描いているのですが、めちゃ渋いダンディなオヤジのイメージにしようと思って描きました。編集部ではウケてたけど、ご本人はどうなのかビクビク。似顔絵は、第三者が見てキュートな場合でも、描かれた当人にとっては心騒ぐもの。以前とっても似ている似顔絵を描いたのに、小説家のN氏と大物芸能人のO氏には嫌われたこともあります。こちらは第2回。マッキーさんはこのワインは女優の誰々と飲みたい、という妄想が出てくるので、文中にでてきたハル・ベリーという女優さんを登場させました。さらにBGMにキングクリムゾンの「クリムゾンキングの宮殿」をかけていたのでこんな絵に。第3回、マッキーさん今度は葡萄畑で真木よう子と飲む妄想をされていたので、こんな絵に。マッキーさんダンディすぎる、と編集部ではうけていましたが、ご本人もウケてくださるといいのですが…。

こちらは追加でたのまれた田中康夫さんの特別寄稿の挿絵。

ぼくも、お酒はワインも日本酒も焼酎のウィスキーもホッピーも何でも好きで、毎日飲んでいますが、楽しいこともあれば失敗もある。最後に梅宮辰夫の名言をどうぞ。〈飲めば酔うし、酔えばドジも踏むさ。それが酒ってもんじゃないかい?「酒は飲みたし、ドジは踏みたくない」ってのは、どだい無理な話なんだよ。やめちまいなよ。酒なんてのは、ほどほどってのが、いちばん難しいんだ。〉

※おっと、忘れるところだった、発売中の「芸術新潮」の赤瀬川原平さん追悼特集で5ページにわたり、赤瀬川さんと仲間たちの相関図を描いています。監修の松田哲夫さんが「赤瀬川さんにもみせてあげたあった」とおっしゃてくれたのがなによりもうれしいお言葉でした。くわしくはまたいずれ書きますが、ひとまずご報告を。

 

 

江戸美術の研究者

東京アートナビゲーションというサイトで連載している「江戸アートナビ」。毎月、巣鴨にある安村敏信さん(前板橋区立美術館館長)のお宅にお話を伺いに行き、ライターが文章にまとめ、ぼくが絵をつけている。ライターの方は山下裕二さんの教え子だった人だ。今月は「月岡芳年」について。内容は連載されているコチラのサイトでみていただこう。

月岡芳年の《正月羽根突図》を紹介します。明治という新たな時代の到来で、幕末~明治初期の絵師たちは己の表現とどう向き合っていったのでしょうか。芳年の生き方とともに、検証していきます。

毎回、安村さんはお話のときに、画集や図録や本を見せながら説明してくださる。それがみんないい本なので、自分も買おうと思って、題名や版元をひかえておいて、あとで探すのだが、すでに古本にもでていなかったり、あっても非常に高い値がついているものが多くて悔しい思いをする。今回も太田記念美術館で出した月岡芳年の図録を元に話をされていて、どーしても欲しかったが、みつからなかった。図録(展示)の充実ぐあいによって画家にたいする印象もガラッとかわる。

この絵は先月の記事「安田雷洲」のときの扉絵です。安田雷洲が描いた赤穂浪士討ち入りの絵には元となる西洋の銅版画があって、それがいっしょに並んでいるので、是非みてほしい。おっかしいんですよ、すごく。

安田雷洲の《赤穂義士報讐図》を紹介します。知られざる絵師の奇想天外な発想に注目です。

安田雷洲って、ぼくもよく知らなかったんだけど、ひと目見て「変だ!」と思ったので好きになりました。はじめて見たときは、「なんだこれは!」と自分で発見したような気分になっちゃうわけだけど、すでに図版になっているわけです。ここに安村敏信さんらの研究者の仕事の成果や意義があるんですね。だれかが面白いと思って発掘してくれないと、目にすることもできなかった。そういうこともこの回の話にでてきます。絵描きは、どんなものでも自分の肥やしにしてやろうと思って見ているから、目の反応もすばやいのですが、自分で発掘、研究までするのは大変です。どんどんおもしろい絵を世におくりだしていただきたい。それに影響をうける絵描きたちも出てくるはずですし。これは11月の絵。

歌川国芳の《下女如来障子へうつる法のかげ》に描かれた美女、於竹さんに注目するとともに、日本絵画における影の表現の変遷をたどります。

この絵はだれがどうしているでしょうか?答えは3枚目の絵にあります。安村敏信さんは、こんな風に描いちゃっても、笑ってくれるいい先生だ!

外国人社員の悲喜劇

講談社「クーリエ・ジャポン」で「20代外国人社員に聞いたサラリーマン文化の謎」という特集に絵を描きました。日本企業の盲点をつく彼らのエピソードをおもしろおかしくふくらませて絵にしました。その①就活の謎。グローバル採用なのに、どうして大阪の商店街?その②研修の謎。いつになったら役立つスキルを教えてくれるの?その③職場の謎。空気って吸うものだよね…?その④制度の謎。会議が長すぎです。その⑤同僚の謎。この人、会議ではぜんぜんしゃべらなかったのに…。その⑥上司の謎。中間管理職ってなんのためにあるの?

…ここまでは日本企業のヘンなところ。でもものごとには長短があり、日本企業ならではのいいところが彼らには目につきやすくもある。たとえば…

その⑦体育会系も悪くない。その⑧上司は日本のお母さん。

と、まあ、アンケートの回答をもとに勝手にシチュエーションを考えてみたのだが、クーリエ・ジャポン2月号を読めば、もっと真に迫るせきらら白書が載っているにちがいない。ぜひ本屋さんへ行ってみよう〜!

東海道五十三次その③

明けましておめでとうございます。

さて新年最初のブログは東海道五十三次のハガキ(日本薬師堂でサプリメントを買うとそのつど送られてくるオマケ)のつづき、その③でございます。二十一宿目「岡部宿」二十二宿目「藤枝宿」

二十三宿目「嶋田宿」二十四宿目「金谷宿」

二十五宿目「日阪宿」二十六宿「掛川宿」二十七宿「袋井宿」二十八宿「見附宿」二十九宿「濱松宿」

ではこのへんでもったいつけて、続きはまた今度にしましょう。

年賀状でものっけておくかな。羊年ってむつかしいですよね。羊を絵にするのが。さんざん悩んだけど自分の年賀状は羊じゃなくしてしまった。

そんなわけで本年もどうぞよろしくおねがいします。今年は9月に気合いを入れた展示をします。まず自分で実録短編小説を書くことからはじめるという斬新な取り組み方をしていますので乞うご期待!…してほしいな…、どうかひとつ…。

 

 

美味礼賛

2008年11月8日以来、旅行にでかけるとき以外は、かならず毎週火曜に更新してきたこのブログだが、ついに昨日、更新するのをわすれてしまった!そんなことは他の人にとってどうでもいいことなのだが、自分としては軽いショックを覚えたのでここに記しておこう。

えー、さて。今週は「たべもの」の絵でまとめよう。料理は毎日つくっている。でも、何も見ないで作るより、レシピを見ながらつくるほうが楽しいと最近は思う。自分流につくると、だいたいいつもの味になってしまう。町のちいさい食堂なんかで、おいしいんだけど、みんな味が似ているというのはこのためではなかろうか。

「小説現代」1月号の特集「美味礼賛」扉絵より。「おいしそうに」「にぎやかに」「いろんな料理を」という注文をイラスト・シェフはこなさなければいけないが、お味はいかがなものでしょう?料理の部分だけ描き方を変えたのは苦肉の策。おいしそうに描くのは僕にとってむつかしいし、たべものの絵自体得意ではない。アナザーバージョンとして下の3点を描いたが、若々しさが足りない、ということで却下であった。「煉瓦亭」で食事する池波正太郎。自宅でひとり自炊(まぜごはんを炊いている)する永井荷風。タラチリをつくる壇一雄と壇ふみ。

…ま、たしかに、昔の文士の美味礼賛ですな。30代のときは魚の鍋なんて見向きもしなかったが、タラチリなどの鍋の美味さにやっと気づいた昨今。下高井戸市場には魚屋が3店舗あり(そのうち「前田商店」の主人はスパイダースの2代目のドラマーだった人だ)お店をまわって切り身や白子をみつくろってチリ鍋をつくる。そして、しみじみと日本の冬を味わうのである。

あ、そうそう。毎週欠かさず更新していると言ったけど、盆と正月は休むことにしてるので、来週は更新しない!年明け6日にまたお会いしましょう。よいお年を!

最近のスポーツ惜別録

文芸春秋「ナンバー」連載中、安部珠樹さんの「スポーツ惜別録」のカットより。デレク・ジーター引退。ニューヨーカー達に愛され、数々の女性とも浮き名を流した、ということで自由の女神にキスされている絵にしてみました。

ビル・ロビンソン。アーカンソー州の自宅で死亡しているところを発見された。「キン肉マン」のロビンマスクのモデルでもある。高円寺にも住んでいた。親日派で紳士的。岡部孝信、44歳、笑顔の引退。楽しくやろうぜ。その姿勢は最後まで変わらなかった。相撲はたまにしかとりあげられないので、自然と絵に気合いが入る。琴欧州はレスリングの話を聞かれると不機嫌になったという。「レスリングは関係ないよ。相撲は相撲だよ」長身で腰が高いのに正攻法の相撲にこだわるから、逆に成績が上がらなかったような気もするが…でも相撲を愛していることは引退後の活動をみていてもよくわかります。相撲はごくたまにしかないけど競馬は多い。なぜなら安部珠樹さんが好きだから。なので馬を描くのが多くなる。「絵描きは馬が描ければ一人前」というのは俗説だろうか?ライデンリーダーが桜花賞をとった95年は野茂が活躍し、地下鉄サリン事件があった。馬でも騎手でもなく実況アナウンサーの白川次郎さんの引退。鹿島アントラーズのスタジアムDJをずっと続けてきたダニー石尾さんが亡くなった。愛車の黄緑色のビートルとともに描きました。ワールドカップ中は週刊化し、内容も特別編。ブラジル、サッカー、ワールドカップというイメージで描きました。トニー・グウィン。通算8回の首位打者は歴代2位。ビデオで相手を熱心に研究することで知られ「キャプテン・ビデオ」というあだ名も。噛みタバコの愛用者に多いといわれる唾液腺がんでお亡くなりに。地下鉄で休場入りしたこともあるそうなのでこういう絵に。クローゼの代表引退。ドイツ代表としては通算71ゴールを決めている。ポーランド出身で二つの国籍を持つ。なので袖には両国の国旗をあしらってみました。CSPはキャンドルスティックパークの頭文字。キャンドルスティックのような照明があるから。その休場が取り壊される。惜別録は人だけでなく、施設にまで惜別の情をあらわして幅広い。絵にするのはむつかしい。苦肉の策で野球盤であそぶ当時の少年たち。坂井義則さんが亡くなった。坂井さんは東京オリンピックの最終聖火ランナー。無名の早稲田大学一年生。職人からリーダーに。ファイターズの稲葉篤紀の引退。職人ということなので、職人の格好にしてみました。東京国際女子マラソンは2008年に横浜国際女子マラソンにかわり、今年で最後だそうだ。東京国際女子マラソンには見せ場があったが、横浜国際女子や東京マラソンは、名所巡りの観光バスみたいなコース設定で、競技としての緊張をかきたてる要素が少ない。というわけで、はとバスのお姉さんだ。ベーチェット病という難病をかかえながらがんばった柴田省吾。ジャイアンツの職員として再出発する25歳の若者はすがすがしい表情をしている。