伊野孝行のブログ

小説現代/タンバリン

「小説現代」の12月号の表紙、目次、扉を担当しました。今年は4月、8月、12月と表紙をやらせてもらいましたが、これでおしまい。「またいつか表紙を飾らせてもらいたい。」今年のクリスマスはサンタさんにそうお願いすることにしました。クリスマスを直前にしたサンタ会議です。円卓の上が地球になっていて、どういうルートで配達するのかのシュミレーション。最近のお願い事はメールできます。お天気ばかりは神だのみ、ツリーにはてるてる坊主がぶらさがっています。こちらは目次の絵。出発前にみんなで集合写真。いろんなサンタがいます。さきほどからガンガン酒を飲んでいた真っ赤なお鼻のトナカイは完全に泥酔しています。はいチーズ!これは扉の絵。せっかくいろいろ準備をしてやってきたものの、子どもたちは夜更かしで、ゲームに夢中。

てなわけで「小説現代」でおおくりしたクリスマスのナンセンス、いかがでしたでしょうか。わたしも小学3年生まではサンタクロースがいると信じていました。

朝、目を覚ますと枕もとにプレゼントが置いてある!「サンタさんが来たよ!」
ただ…お願いしたものは、前後左右に動くラジコンカー。でもサンタがくれたのは右にしか回らないリモコンカー(操縦機と車がコードでつながっている)。
あれ、おかしいな?サンタさんにうまく伝わってなかったみたい…。
これが私のクリスマスの思い出。メリークリスマス!

さて、タンバリンギャラリーのタンバリン展「FANTASTIC DAYS 2014」に今年も参加しています。
2014/12/09(火)〜12/21(日)
11:00〜19:00(12/15・月 休廊)いつものごとくな絵で申し訳ないですが、こんなのを出します。売ってます。誰か買って〜。

 

 

そんなの関税ねぇ!

昨日(12月1日)、今年の流行語大賞が発表された。流行語大賞といえば「現代用語の基礎知識」である。去年にひきつづき今年も「現代用語の基礎知識」からお仕事をいただいた。森永卓郎さんと小島よしおさんのTPPについての対談につけるイラストレーション。対談は森永さんの事務所でおこなわれたが、S編集長から「伊野さんも来る?」と誘われて、いそいそとミーハー精神まるだしで出かけて行った。

森永さんは顔が大きいが、小島さんは顔がすごく小さい。小島さんは「そんなの関係ねぇ!」で何年か前に流行語大賞にノミネートされた関係で対談に登場。小島さんのギャグをもじって「そんなの関税ねぇ!そんなの関税ねぇ!ハイ!TPP〜!」という詠み人知らずのパロディがあるらしい。小島さんはとてもクレバーな印象だったなぁ。

TPPの何が問題なのか、この対談でわかりやすく語られている。〈TPPの本質というのは、全部アメリカ並みにルールを合わせましょ、というのがTPPなんです。(森永さん)〉日本の農家は、柔道とか華道とか剣道と同じ、農業って「道」。農道。(農道ってのは実際にあるけど…)つまり文化のことですね、気持ちや思いをふくめた。ところが〈TPPが一番最初に狙っているのは、農協を潰すことなんですよ。なぜかと言うと、農協は農民同士の助け合いで、ビジネスの論理で動いてないから。だから大っ嫌いなんですよ。(森永さん)〉

アメリカの医療費についてはこんな話があるそうだ。〈たとえば出産のときも、1泊するととんでもないカネをとられるので、車で病院の前まで行くんです。で 破水しそうだとなったらパッと病院に入り、ぽんっと産んで、すぐ出てくる。病院には絶対に泊まらない。(森永さん)〉〈あ、ホテルでいう「ステイ」にする んですね。休憩のほうに行くんだ。(小島さん)〉

労働者も海外から低賃金の人を入れたほうがいいと主張しているのが竹中平蔵さん。彼は外国人の安いメイドをいれたらそのぶん日本の女性の活躍につながると言うが〈普通のOLでメイドを雇える人がどれだけいるかって。メイドを雇うためにはメイドの部屋が必要なんですよ。普通のOLの家にメイドの部屋 があるか、ってのがわかってないんですよ、竹中は。〉と森永さんは怒っている。

TPPを受け入れて社会のしくみがビジネスの論理で動いていくと、まるでマンガのような世界がくるのもそう遠い未来ではないかもしれない。金に金を稼がせるような仕事をやめて、真面目に働こう。森永さんはガンディーの経済学の本を読んで感銘を受けたそうだ。〈ガンディーは大資本とか金の亡者 たちに、暴力はふるわないけど、絶対に服従しねえぞ、と。ガンディーは、誰を助けるべきかというのを考えるんですよ。(森永さん)〉ま、ぼくのブログを読 んでもTPPの正体が何か、まだわからないと思うので、ぜひ「現代用語の基礎知識」を買ってくださいね。

 

 

最近の本の仕事

今週は最近の本の仕事から。まずは日本経済新聞社編「日本語ふしぎ探検隊」各章扉のカットは以下に。画材はペン。装幀はベターデイズ。つづきまして同じく日本経済新聞社から出ている守屋淳さん著「図解 孫子」のカバーの表1と表4。そして中のカットに描いたものから何点か。デザインはカバーが新井大輔さん。本文が品川幸人さん。おつぎは海竜社から出ました小出一冨さん著「人生が変わる古事記」のカバーと本文挿絵から何点か。デザインは村橋雅之さん。最後は新潮文庫のアンソロジー、縄田一男編食欲文学傑作選「まんぷく長屋」です。もちろん新潮社装幀室のデザイン。このアンソロジーの中の伊藤礼さんの「狸を食べすぎて身体じゅう狸くさくなって困ったはなし」について触れたかったのですが、もう疲れたのでやめておきます。

 

 

最近のさし絵

今週は最近描いた挿絵から。「小説新潮」で連載中の木内昇さん「球道恋々」5回〜7回の挿絵。木内さんの「球道恋々」は明治時代の高校野球の話。つけペン(Gペン)で描いてます。筆記用具の歴史でいっても明治時代にペンも使われだしたわけなので、挿絵もペンで描いてみました。つづいては「野性時代」で連載中の赤川次郎さん「鼠」シリーズ。鼠小僧を主人公にした小説ですが、赤川さんだから、どこかかわいらしさがあります。あんまり渋くならないように、明るい挿絵をこころがけております。3つ目は「オール読物」の読み切り短編小説。平岡陽明さん「床屋とプロゴルファー」。筆のタッチをつけて描くのは時代物には合うのですが、現代ものにはどうも合わない。しかも「床屋とプロゴルファー」というタイトルがすっとぼけた組み合わせなので、絵でもそれをあらわしたい。というわけでサインペンで描きました。最後は「小説現代」の読み切り短編小説、夢枕獏さんの「手鬼眼童」。江戸の長屋にすむ妖術使いの先生のお話。先生は40代なのに白髪頭でなぜか中国の道人のような格好をしている。つまり、奇妙な中国古典のお話の雰囲気が、この小説にはあります。不定期に発表されるらしいですが、すでに私はこのシリーズのファンです。夢枕獏さんの手書きの原稿を読むのもうれしいです。

悩み100年 男の生きざま

先週にひきつづき、読売新聞の人生相談コーナー「人生案内」の100周年記念広告です。「女のためいき」につづき今週は「男の生きざま」編です。嫁候補10人を断り続け童貞を維持する30歳 大正3年(1914年)働きながら勉強を 小学卒で妻にも職場でもひけ目 昭和34年(1959年)嫁が来ない 農業はイヤと 昭和40年(1965年)男やもめ生活4年 2人の子育て、もう白髪 昭和49年(1974年)抜け出せぬ同性愛 家庭を壊したくない36歳男 昭和52年(1977年)内気な夫 酒好き転落、家では孤独 昭和56年(1981年)髪の毛薄く、恋あきらめ、人付き合いもやめた 平成8年(1996年)公衆便所に並んで用足せない 会社でも外出先でも 平成19年(2007年)ペットロス、仕事が手につかない50代男 平成23年(2011年)還暦過ぎて再婚のチャンスはないものか 平成25年(2013年)

…というわけで「人生案内」100周年企画は以上です。相談の中に「髪の毛が薄くなり…」というのがありましたが、実は私もゲーハーです。最近はもう気にもしてませんし、坊主頭にしてからはむしろ好感をもたれるくらいです。ただ、薄くなりはじめたときの事を思い出すと、この相談者の気持もわかります。その頃のことですが、ウチの母親に「あんたもハゲる前に結婚せなアカンで〜、できちゃった結婚やなくてハゲちゃった結婚やな!あはははは!」と言われたことがあります。

「悩み100年」復習編はこちらでございます↓

「嗚呼、人生」編
「ガンバレ、青春」編
「女のためいき」編

 

 

悩み100年女のためいき

読売新聞の人生相談コーナー「人生案内」は今年で100周年をむかえます。それを記念した広告に絵を描いてます。
春に「嗚呼、人生」、「ガンバレ、青春」の2種が発表され、秋に「女のためいき」、「男の生きざま」が出てます。もう電車の車内広告などに 出ているみたいで、友だちから「見たよ〜!」って報告をうけますが必ずついでに「絵がちっちゃいね」と言われるのがご愛嬌。貞操を汚されて夫に詫びるも離縁

大正6年(1917)妻が働くのは夫の恥?

昭和9年(1934)戦争で夫亡くした妻 しゅうとめ押しつけられ

昭和25年(1950)子どもに恵まれぬ 夫は別れたいとまで言う

昭和31年(1956)課長に口づけされ、奥さんも裏切りたくないOL

昭和47年(1972)孫を抱きたければ手を消毒しろという嫁

昭和50年(1975)仕事以外に雑用まで 女性の地位の低さ嘆く英国帰り

昭和54年(1979)結婚したい50代女性、今更みっともないと妹反対

昭和60年(1985)派手なママ友しゃくに障る私

平成21年(2009)60代の娘に叱られてばかりの実母

平成25年(2013)

コチラの読売新聞「大手小町」では当時の回答も読めます(click!)