伊野孝行のブログ

最近のスポーツ惜別録

雑誌「ナンバー」で連載中の安部珠樹さんの「スポーツ惜別録」。最近はどんな人が引退したり、お亡くなりになられたりしているのでしょうか?水島新司先生の野球マンガ「あぶさん」が最終回をむかえる。1974年〜2014年。オルフェーヴルの引退。オルフェーヴルは野性味あふれる馬で、ものすごい2着というのを2回やっている。そのひとつが阪神大賞典。youtubeのリンク貼るので見てください。とにかくすごいから。2012年 阪神大賞典 オルフェーヴル激走

安藤美姫の引退。フィギュアスケーターは強度のナルシストでないとできない、ということで。プロボクシングのデビュー戦でTKO負けして急性硬膜下血腫になりその後お亡くなりになった岡田哲慎選手。危険なスポーツだからやらない?いや、それでも青年たちはリングに立ち続けるのだ!自らの激情で遊び、少年らしさを漂わせたストイコビッチの知性。空前絶後の9連覇を成し遂げた川上監督がお亡くなりになった。川上監督の趣味は石集め。おもしろい形の石を集めていた。世界王者になりながら一度も世界タイトルマッチで勝ったことがないケン・ノートン。ヘビー級黄金時代の名傍役。ビートルズでいうとリンゴ・スターのポジションだということで。鬼才の騎手によりそうように走ったフジノウェーブが死んだ。下克上と一攫千金、ダイユウサクは競馬ファンに夢を遺して逝ったのだ。豊田泰光さんが「週刊ベースボール」に連載していた名物子コラム「豊田泰光のオレが許さん!」が終わった。選手もファンも大人であれ、と20年間説きつづけた。石井一久の引退。最後までプロ野球の色に染まらなかった。彼のユーモアある行動にはプロ野球の定型に対する批評が感じられる、ということで、ボケ兼ツッコミにしました。

単行本できまして候

梶よう子さんの「立身いたしたく候」このたびめでたく単行本になりまして候。連載時の挿絵も、梶さんじきじきにわたくしにご指名いただき、ついで単行本のカバーにも推してくださりまして、嬉しくてたまらず候。図に乗って「各章の扉には挿絵を入れましょうよ」と編集者の戸井氏にもうしでたところ、これまた快諾され、ついに念願の挿絵入り単行本をつくることに相成候。図案配置係は鈴木久美氏にござ候。カバーをぜんぶ拡げるとこうなりまして候。画像をクリックするとデッカくなるので是非クリックすることをおすすめ申し上げ候。挿絵は全部で八点。連載時に気に入らないのは描きなおしてござ候。

 

 

ナンセンスなおはなし

主婦の友社から発売中のオムニバス絵本「ユーモアを楽しむ心が育つおはなし」で二つのおはなしに絵をつけてます。ひとつめは内田麟太郎さんの「へんなこといった?」というナンセンスなおはなし。ナンセンスというのは意味をなさないことが面白いので、いつもの自分の絵だといまいちあわない。長新太さんのような絵がやっぱりあうのだ。絵自体に常識や約束事を無視しているようなところがないと。というわけで、苦肉の策でこのような絵にしました。ナンセンスなおはなしのあらすじを書くなんて、それこそナンセンスだから、書きません。(見開き)(見開き)(見開き)(見開き)

以上、「へんなこといった?」おわり。つづいてはふたつめのおはなし「うその名人とその息子」。ナンセンスではなくホラ吹きもの。こっちは、いつものごとくの、かわりばえのしない絵でございます。全部見開きでのせてしまおう。江戸と京都のうそつき名人が、大阪のうそつき名人をたずねるが、あいにく留守だった。るすばんしていた子供が親以上にうそつきで…というはなし。

とうちゃんは、富士山が倒れそうになったから、線香二本でささえているからいない、とかかあちゃんは天竺の地面がほころびたから縫い針でつくろいにでかけていない、とか。さんざんうそをこきまくってとうちゃんが帰って来てから、こってり油をしぼられる…はずがぎゃくにうまいことだまして家でまんじゅうを食う。そんなはなし。

 

 

せっせと似顔絵描き

「日経おとなのOFF」はよく私に仕事を依頼してくれるいい雑誌だ。今月号でも似顔絵を描いた。「ニッポン 散財の達人列伝」として、フランス文学者の鹿島茂さんが一目置くお金使いが見事な人たちの似顔絵。ひさしぶりに似顔絵ごころをくすぐられる人選で、描きたい!という気持が湧いてきた。借金をくり返しながら5万冊の蔵書を持つ鹿島さん自身も達人です。文芸春秋を大成功させ、富豪となった菊池寛は、金をせびりにくる文士を独自にランクづけしてお金を渡したという。「銀座ハリウッド」を開業しキャバレー王となった福富太郎さん。河鍋暁斎などの絵画蒐集家としても有名。「芸術新潮」で連載していた「アートキャバレー」すごくおもしろかったです。薩摩次郎八。実家からもらった資金でパリで蕩尽。その額今のお金で800億円!「日本館」をパリに建設したり文化貢献もこれぞパトロン。お金を使い果たして帰国してからは徳島でつつましく暮らす。三木鶏郎。糖尿病をわずらうと絶頂期にもかかわらず、あっさり引退。ハワイで遊んで暮らす。中山正善。天理教教祖中山みきの曾孫。自分のコレクションを元に開いた天理図書館の蔵書は200万冊!最後は岸辺シローさん。子供の頃にドラマの「西遊記」を見て、岸辺シローのファンになった。岸辺シロー演じる沙悟浄は、人生に消極的な姿勢で飄々として、ときどきボヤく。このキャラにあこがれ、小学生のわたしは岸辺シローの沙悟浄のように生きたいとさえおもったのであった。しかし、コレクター岸辺シローは貪欲。夏目漱石の「漱石山房」を完全再現した。本棚の本に至るまで。スゴイ!詳しくは「日経おとなのOFF」をご覧いただきたい。

さて、お次ぎは前々号の「ラファエル前派」の特集より。ラファエル前派の画家は本人までも、少女漫画のようなのだった。目の中に光はいれたものの、だいたい自画像や肖像画に忠実に描いています。ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティウィリアム・ホルマン・ハントジョン・エヴァレット・ミレイ

 

 

東海道五十三次その②

日本薬師堂で通販商品を買うともらえる「東海道五十三次カード」。全部集めるとなにかいいことあるよ、きっと。前にブログで日本橋から三島までアップしたので、今回はそのつづき。「沼津」「原」「吉原」「蒲原」「由井」「興津」「江尻」

この東海道五十三次は、足腰達者で元気なおじいさんおばあさんが、旅をする設定。もちろん広重の東海道五十三次のもじりです。元の浮世絵はB4サイズくらいかな?私はA4のサイズで描いている。カードはハガキサイズだから、さらに縮小されてしまうので、大雑把に描いてもちょうどいいくらいなのだが、元の浮世絵はかなり細かく描写されていて毎回驚く。なのにスッキリした印象をうけるのはやっぱ構図が考え抜かれているのと、版画の線だからだろう。あとモノの形の単純化もうまい。五十三次を全部描くのは、勉強になるなー。

ところで、ご存知のとおり、江戸幕府は諸大名が反旗をひるがえさないように、参勤交代という制度をもうけて、定期的に江戸に行き来させ、各藩の財政をムダに使わせた。これによって、徳川の世は十五代も安定し、東海道をはじめとする五街道も発達し、おまけに明治になってから、鉄道を通すときに、街道がそのまま使えて、近代化も早く進んだ。封建制度維持のための制度が、すばやく近代化をうながす元になっていた、というのがなんともおもしろい話である。

 

 

あけましておめでとう

あけましておめでとうございます。盆と正月をのぞいては毎週火曜にかならず更新するのだけがとりえの当ブログ。さかのぼれば2008年11月8日にスタートしているので、5年は経っている。ほんとに「あっ」という間。しかし、私は忙しいと感じることがめったにない。自分のまわりにはたいていのんびりした時間が流れていて、いつも気づくと、横になっている。寝ころぶことが私の基本姿勢であるかのように。ときどきあまりに人生をムダにしているような気がする。「時間がない」なんてカッコイイこと言ってみたいよ、今年は。そんなところで、本年もどうぞよろしくおねがいいたします。

さて福音館書店「母の友」1月号の「読んであげるお話のページ」で「おばあさんとおに」というおはなしに絵をつけた。本田いづみ さんの作。掲載された「母の友」が見当たらないので(ちゃんと送ってきていただいてますよ、見当たらないのは私の部屋が汚いから)、記憶をたよりに話を説明すると、よく「痛いの痛いのとんでいけ〜」ってあるでしょ?あのおまじないをマジで使えるおばあさんがいて、ある日たんこぶをつくった子供をなおしてやった。そしたらその「痛いの」が山の向こうへ、ぴゅーっと飛んでいいって、悪さをするので嫌われ者の鬼の大将のお腹にひっついた。もう、痛いのなんの!鬼の子分たちは親分のことがせづねぐて、婆さんのところに頼みに来たわけだ。(ちなみに一番右の赤鬼が次のヘッドになると見たね。このウンコ座りからして。ま、おはなしとは全然関係ないんですけどね)でも、他へ「痛いの痛いのとんでいけ〜」とやると他の者に迷惑かかっちまうし…。どうしたもんかなぁ。そこへ「ぺったんこ、ぺったんこ」と正月用のモチをつく音が聞こえて来た。そうだおもちに飛ばしちゃえば?おもちは杵でつかれても平気のへいざ、痛くもなんともありゃしない。しかもつけばつくほどうまくなる。おばあさんの名案!おかげで鬼の腹痛も治って、ふだんの悪行を反省し、おばあさんにお礼を言って山に帰っていった。みんなもおいしくおもちを食べましたとさ。…というような内容だった。…今、ようやく「母の友」1月号を発見した。私の記憶はだいたいにおいてあっていたが本田いづみさんの文章で綴られると見事である。当然だ。これはやはり本物の文章で確かめねば読んだことにはならないので、こちらでゲットだ!

ちなみに今回の絵の線画は左手で描いた。達者な感じの線にしたくなかったので。文字は左手だと描きにくいが、この程度の絵なら左手でもじゅうぶんだな…と思った。