伊野孝行のブログ

怪談を書く怪談

KADOKAWAのメディアファクトリーから発売中の、加門七海さんの新刊「怪談を書く怪談」のカバーと扉絵を担当しました。加門さんといえば、怪談の名手。この本は小説ではなく怪談エッセーなのだが、このジャンルを「怪談実話」と呼ぶ。タイトルは、怪談を書くことがまた怪を招く、という加門さんの経験によるものです。「加門さんらしき作家が文机で原稿を書いているところはどうでしょう?」「加門さんは実際に着物をたくさんお持ちなので、着物を来ているところは?」「愛煙家で猫をかっているので、絵の中にいれてみるのは?」「竹久夢二くらいのレトロな雰囲気がいいんじゃないでしょうか?」…次々に私はアイデアを出した…のではなく、編集の岸本亜紀さんとデザインの横須賀拓さんが次々にアイデアを出してくれたのであった。ぜんぜん構想をまとめないまま打ち合わせにのぞんだので、助かった。わたしの考えたことは「煙草の煙がガイコツになっている」くらいです。打ち合わせは横須賀さんの事務所で行われたのだが、「こどもの城」にほど近い、居心地のよいところで、打ち合わせ自体も雰囲気良くとてもいい感じであった。ときどき、最初の打ち合わせで「な〜んか、ヤダなぁ〜ヤダナぁ〜」「な〜んか、おかしいなぁ〜、おかしいなぁ〜」と稲川淳二のように肌で感じる時がある。そういう場合はあとあとトラブルが起こることが多いのである。べつにこれは怪のしわざではないけどね。上は表4の絵。下は扉に使ったカットを集めてみた。というわけで真冬の怪談話はいかがでしょう?

 

 

倫敦に白熊現る!

時は一八六三年、夜霧に黒く濡れる倫敦の街。街灯の光のなかに浮かび上がるのは、日本のサムライ…???ン?…ンン?…シロクマではないか!講談社より本日発売の荒山徹さんの新刊「長州シックス 夢をかなえた白熊」のカバーを担当しました。(デザイン:内山尚孝氏)帯には「語り口と結末は、まるで落語のようなあじわい。名人荒山徹の幕末異聞集!」とあります。わたしの使命は「ジャケ買い」させることでございます。「なんだこれは!?」というのは芸術の根本でもあります。今回はオイルパステルとダーマトグラフで描きました。シロクマのみつめる先にカメラをパンすると、そこには怪人、フー・ワンチュー博士がいます。これが表4。

フー・ワンチュー博士をwikiでひくと 「Dr.Fu Manchu, 傅満洲博士 イギリスの作家サックス・ローマーが創造した架空の、世界征服の野望をもつ中国人の悪人。西欧による支配体制の破壊と、東洋人による世界征服を目指して陰謀をめぐらす怪人である。」さあさあ、いかなるお話か?それは買ってみてのおたのしみ〜。ちなみにこの小説は初出が「小説現代」で、その時にもさし絵を描かせてもらいました。わたしに幸運をもたらした挿絵はコレだ

 

 

男のトイレ事情

DHCの「みんな、げんき?」で「男のトイレ事情」というコーナーに絵を描きました。トイレ事情といっても「小」の方です。まずはチェック項目で自分の状態を把握してみましょう。◯残尿感がある。◯夜中になんどもトイレに起きる。◯トイレが近い。◯急にもよおし、もれそうになる。◯途切れる、なかなか出ない。◯おなかに力を入れないと出ない。

さて、いくつあてはまりましたか?ちなみに私は2つ、3つ当てはまりました。5年くらい前から頻尿ですが、意識するとよけいにそうなる気がします。居酒屋に行ってもトイレに一番立ちやすい席に座るようにしてるんですが、最近、調子がよくて一回もトイレに行かなかったことがありました。さすがに二軒目では行きましたが、そのときは、こんなに出るか!と思うくらい出て気持がよかった。ひさしぶりに充実感を覚えたものです。尿漏れはまだないですが、蛇口はキュッとしめておきたいもんです。女性のみなさまも健康な排尿生活をおくりましょう〜。話かわって、久しぶりに売れていない拙著の宣伝でもしておくかな。「画家の肖像」という本がハモニカブックスより発売されていますが、みなさまよろしく〜。といっても特殊な本屋さんにしかないですが。写真はあのポールコックスさんが「気に入った!」とおっしゃった時のもののようです。ハモニカブックスの吉田さんから送られてきたのを、さっそく利用して宣伝してみました。ポールコックスさん、ごめんなさい。ハモニカブックス「画家の肖像」はコチラ!

 

 

午年地口行灯暦

福音館書店の「たくさんのふしぎ」2014年1月号(第346号)の付録として「午年地口行灯暦」を描きました。「うまどしじぐちあんどんごよみ」と読みます。地口とはダジャレの一種ですが、ためしにwikiで「地口」をひくと、そこには「地口行灯」の写真がでています。地口を絵とともに行灯に書き、それを飾ってたのしむ風習が江戸中期ころより流行しました。今も行われています。「地口」とは?

たんなる、「馬年だじゃれカレンダー」ではなく、子供たちに文化を伝えたい、というところが絵本界のNHKとも呼ばれる(?)福音館書店の仕事でございます。地口は私と編集者の北森さんとで考えました。まず1月から見ていきましょう。1月は「笑う門には馬きたる」馬がきて午年のスタートです。2月は「馬にウグイス」です。梅に鶯というと花札と「梅に鶯、松に鶴、牡丹に唐獅子、朝吉親分言うたら清次兄さんがつきもんや!」でおなじみ「悪名」を思いだします。3月は「ロデオとジュリエット」4月は「花よりうまかった」これは「花より団子」→「花より馬子」→「花より馬方」の変形です。5月は「すべての道は老馬に通ず」すべての道はローマに通じ、すべての生き物は老いる。「馬も歩けば豹に当たる」思わぬ災難は犬だけでなく馬もある。どしゃぶりの雨は季節が6月だから。7月は「第一のホース!」今でも水泳の大会では「第一のコース!」ってアナウンスで紹介してるんでしょうか?8月は「草木も眠る馬三ツ時」ちなみに正午と呼ぶように、午(うま)の刻は昼の12時を中心とする約2時間なので幽霊の出る時間じゃないですけどね。9月は「シマウマイ弁当」わかります?シュウマイですね。自分で作った地口ではこれが一番気に入ってるんですけど。10月「勝ち馬のオーボエ」負け犬が横で遠吠えしてます。11月は「馬手投げ」どこかで相撲ネタを入れたかったのですが11月場所があるから、むりやり。12月は「紅白馬合戦」はい、そういうわけでございまして、このカレンダーが欲しいかたは「たくさんのふしぎ」を買うともれなくついてきます。本体のほうは斉藤槙さんの「虹色いきもの図鑑」という美しい絵本になってます。絵本とカレンダーがセットで700円!安い!買うしかない!福音館書店「たくさんのふしぎ」

【展示情報】下記の展覧会に参加します。

◎12/6〜11 HBギャラリーの『富嶽十六景 Part2  – 16名のイラストレーターが描く富士山 -』に富士の絵を。

◎12/7〜16 書肆サイコロの『生誕110年没後50年山之口貘全集刊行記念「貘展」』に貘さんの肖像画を。

◎12/10〜22 タンバリンギャラリーの『FANTASTIC DAYS 2013』に絵付きタンバリンを。

クーリエジャポン

講談社「クーリエジャポン」の最新号でいつものごとくな絵を描いています。でも、今回はいつもとはひとあじ違う。私は「ちょっとレトロな雰囲気で」とか「和っぽい感じで」というリクエストを受けることが多いのだが、「クーリエジャポン」は世界中の記事が載っていて、誌面の雰囲気も外国雑誌を意識しているところがある。なので、それっぽく描くのが今回のポイントだった。他人に「あなたって、意外に◯◯なところがあるのよね」とイメージと違うことを指摘されるのってうれしくないですか?私はそれがすごくうれしいし、おもしろい。
特集内容はあこがれの外資系に勤める日本人に聞いた「外資系勤めのここが大変なんです」。くわしく知りたい方は雑誌を読んでもらうことにして、サラッとイラストレーションの紹介だけ。「パパ、次はジュエリーを見にいきましょう!」高給取りの外資系社員であるが、家族が贅沢になれてしまって、生活レベルを落とせずに苦労している人もいる。「西海岸とのメール合戦で、体内時差が狂っちゃうよ…」時間をとわず飛んでくるメールには即レスが当たり前。リプライが遅いと信頼されない社会だそうです。「お前のせいで、10億吹っ飛んだぞ!」絵は決しておおげさではなく、証言にもとづいている。興奮した上司がモニターをたたき割るなんて日常茶飯事!「ああ、日本人の悪口言ってんだろうなぁ…」本社にとって日本はあくまで市場のひとつ「植民地」にすぎない。
「憧れのマネージャーがこんなところで…」一見華やかにみえる業界だが、年をとって生き残るのは難しい。年俸が高い部長クラスほど首のあたりが涼しくなるのだとか。「いい肉を食わせてるから、餌代が大変でね」本社の幹部が日本にやってくると、トラブル発生は必死!?実際、南アフリカ在住の幹部はライオン飼ってるし…。関係ないけど外人の顔っていつもうまく描けない。でも今回はアル・ハーシュフェルドのカリカチュアをお手本にしたのでいつもよりは雰囲気出たかな。

というわけで今回いろいろな証言をされた方(これは実在の人)を似顔絵(これはあくまでイメージです)で紹介。左上から時計回りにITに勤める林五郎さん、金融にお勤めの山田金人さん、アパレルの日本支社長の美登類さん、コンサルティングの真木是重さん。それぞれのみなさんが他にもいろいろクーリエジャポンでしか聞けない裏話をしているので、外資の仕事に興味があるひとは今すぐ本屋に買いに行こう!

 

 

現代用語の基礎知識

自由国民社「現代用語の基礎知識2014」のジャンル別キーワードの見出しに120個くらい絵を描きました。「現代用語の基礎知識」はブ厚いのでスキャンするのが難しい…なので絵だけ載せてしまおう。といっても全部載せるわけではないのでご安心を。「地球環境」「生物動物」「通貨為替」「経営」「デジタル家電」「生命技術」「医学」「社会保障」「サッカー」「流行観察」

このへんでもうやめときます。今年もいろいろありました。さて「現代用語の基礎知識」といえば「流行語大賞」を決めているところでもあります。今年はどんな言葉にきまるんでしょうね?

最近話題の「偽装表示」はまだまだ出てきそうですね。エビやお肉くらいはかわいいもんですが、「原発事故」はつつみかくさず知らして欲しい。えー、そんなわけで最後に笑えないお笑いを一席。

「偽装表示」とかけて「おもてなし」と解く。そのこころは?
お後はよろしくない!