伊野孝行のブログ

惜別録/TIS夜店

運動音痴なので球技は大の苦手なのだが、走るのは得意だった。だから運動会は好き。大嫌いな球技がないし、大得意の短距離が走れたから。ふだんはジッとしているのに運動会のときだけ、急にサササっと走るのでクラスメートは驚く。ガニマタでダッシュする僕を見て、ふだんほとんどしゃべったことのない男子が近づいてきてこう言った。「伊野くん、ゴキブリみたいだね…。」
さて、ナンバーで連載中の安部珠樹さんの「スポーツ惜別録」。引退した選手や亡くなった選手への惜別の情がここにはある。トウカイテイオーが死んだ。「貴公子」と呼ばれたイケメン。馬にイケメンなんてあるのかと思う方は検索してみてください。馬にも髪型があることを発見。散髪してたとか。安部さんはトウカイテイオーを貴種流離譚の源義経にたとえていたのでこんな絵に。中畑の引退…ではなく、ソフトバンクの斉藤和巳投手。いつも絶好調とはいえぬ野球人生だったが子どもの頃のあこがれは、絶好調男の中畑。ちなみに斉藤投手の奥さんはタレントのスザンヌ。バレーの竹下選手、大友選手。コラムは安藤美姫の出産からはじまっていました。出産、育児は女子選手にとって重要な問題。即物的に「ママさんバレー」競馬の柴崎勇調教師。騎手でもあった。「決してトップジョッキーとはいえなかったが渋い腕を持っていた騎手と、クセはたっぷりあるが、力を開花させてくれる騎手を待っていた馬の幸福な結びつきがあった」ということでイヒヒ…と当人同士、お互い背中越しでもわかり合う仲という絵にしてみました。ちなみに「スポーツ惜別録」でいまのところ一番登場回数が多いスポーツは野球でもなくサッカーでもなく競馬。ご存知、高見盛。ぼくが唯一くわしい「相撲」はこれで2回目。前回は大鵬だった。相撲メンコ風にしたかったのでこんな絵。断髪式です。古いプロ野球選手の尾崎行雄さんです。「怪童」と呼ばれ、「記録よりも記憶」タイプの選手でオールドファンに愛されていました。絵は試合の前はカレーを二皿たいらげるというエピソードから。ベッカムの引退。実はこの回は旅行に行ってたため安部さんの原稿を読まずに描いた。なのでこんなエピソードがあるわけないけど…。萩原 宏久トレーナー。ジャイアンツ時代は一軍チーフトレーナーとして在籍、江川卓、桑田真澄、松井秀喜を始めとする選手たちのトレーナーだった。長嶋も信頼し、みんなからも「ハギさん、ハギさん」と親しまれた。まさに指圧の心は母心ならぬ野球の心である。プロレスラー小橋健太の引退。引退して、まるでサイコロみたいな体に着たスーツが似合わない!しかし、それこそ最高のプロレスラーであった証。おつかれさまでした!

ここで告知をひとつ。只今リクルートG8で開催中のTIS「歌舞伎イラストレーション」ですが、来る21日土曜日5:30p.m.-8:40p.m. 「TIS夜店」をやります。入場無料!今年はTISも25周年ということで、パッと盛り上がりましょう〜!ということで出品作家が売子になって1日限定の夜店を開店いたします。レアなグッズや本など、作家本人からご購入いただけます。お気軽にご来場ください。ファン感謝デーということで、たとえば、イラストレーターの直筆うちわが500円で買えたり、南伸坊さんをはじめ委員が制作した「点取り占い」が60種あって一回10円でひけます。安っ!今どき10円で買えるものはここにしかない!小銭をにぎりしめて土曜はG8に遊びに行こう!25周年企画TIS夜店はこちら!

 

 

偉人たちとの夏

絶対的存在感で君臨していた「夏」もどうやら過ぎ去ってしまったようだ。「もう〜、たえられない〜っ」と喘いでいたけど、今はチトさみしい。

あ、さて。

今週はこの夏描いた偉人の似顔絵をただ載せておわります。まずは「芸術新潮」の丹下健三特集で描いた似顔絵。丹下健三
おつぎは「日経おとなのOFF」で描いた「仏教特集 日本の名僧」と「書道特集 日本の書家」と、あとなぜか、秦の始皇帝とアショーカ王の似顔絵。空海法然一遍親鸞道元蓮如重源栄西…以上、日本の名僧松花堂昭乗本阿弥光悦烏丸光弘…以上、日本の書家秦の始皇帝アショーカ王

 

 

みちのくへの旅/鼠小僧

本当なら今週は「ウィーンの旅、その2」で更新の予定だったが、日曜、月曜で「みちのく旅行」に行ってきて用意ができなかったので一回休みにすることにした。ごめんなさい。石巻や気仙沼、陸前高田など震災から2年以上たってようやく行くことが出来た。やはりその場に身を置くことで感じるものはほんとうに大きい。元の場所に、以前のように家や店を建てられないので、海岸沿いの平野部は今も更地のまま雑草が生い茂っていた。それでも人は元気で活気があった。でも陸前高田は見渡す限り一面の更地で街も人も跡形もなく重機が動いているだけだった。「奇跡の一本松」だけがある。レプリカでもこれは残しておいた方がいいなと強く思った次第。(他の街にもところどころに破壊された小学校や、鉄骨だけの役場や、うちあげられた巨大な船がモニュメントとして残されてたので)
10年後くらいに復興した街をまた見に行きたいと思った。「石巻」

「陸前高田」

みちのくに行くのならついでに福島県立美術館でやっている「プライスコレクション」を是非見たかった。プライスコレクション、これが最後の里帰りだというし。ものすごく良かった!これは見ておいて大正解!で、今回の旅は大学のときの友達と二人で行ったのだが、福島県立美術館に着いて記念写真を男同士仲良く撮りあっていると、後ろから声をかけられた…。振向くと「日下潤一とBGRAPHIX」の一行が!つまりウィーンにいっしょに行った人達です……どんな偶然?…あぁ、太陽が眩しい…。

はい、とってつけたように仕事の絵でも載せます。「野生時代」で赤川次郎さんの小説「鼠」シリーズに今号から挿絵を描いています。鼠小僧のお話しです。やはり時代物のなかでも盗賊が出てくる話は一度は描いてみたいものです。

 

 

最近の美術時評

「芸術新潮」で連載中、藤田一人さんの「わたし一人の美術時評」のここ三ヶ月の一コマ漫画です。まず今売りの8月号から。タイトルは「おしゃべりな美術家たち」です。わたしが描いたのはこんな絵。ダリが漫談やっているところです。「ガラにもない…」もちろんわかりますよね?ダリの奥さんガラだから。コラムの内容は最近やたらと多い美術館やギャラリーでの「アーティスト・トーク」の是非についてです。わたしもやったことあるので読んで反省すること多し、でした。

お次ぎは、7月号より。タイトルは「日本美術における戦後民主主義とは何だったか?」です。戦後の民主主義というとそれまでの大日本帝国から解放された民衆が目覚め、岡本太郎も言うように「絵画は万人によって、鑑賞されるばかりでなく、創られなければならない」という理想がありましたが、さてさて現在は…。描いたのはこんな絵。
戦後の民主主義といえばこの人かな?と吉本隆明を描きました。ちなみに吉本隆明の本は「共同幻想論」をはじめ一冊も読んだことないです。というか難しすぎて読めない。呉智英さんの「吉本隆明という共同幻想」は読みました。こちらは何回か吹き出すくらいものすごく面白い本でしたよ。この一コマ漫画は自分でもうまく出来たと思うんですけど、くりかえしますが吉本隆明さんの本は一冊も読んでないのです…。

さて6月号は「日本のものづくりと伝統工芸の課題」でした。「人間国宝」というのがありますが、工芸=ものづくりは、「人間国宝」みたいな個人作家のものではなく、それを支える多くの人達をふくめたシステムである、ということが忘れられがち。…というわけでこんな絵にしてみました。この連載が毎月唯一頭を使う仕事でして、今も来月号のアイデアに悩んでいるところです。

 

 

らくご・道具屋

ずいぶん前の仕事(去年の暮れ)のを今頃載せるなんてマヌケですが、マヌケが主人公の落語だから、ま、いいか。「ふでばこ」という季刊誌で描いた「道具屋」です。お江戸じゃ「古傘買い」だの「紙くず屋」だのいろんなリサイクル業者がいたんですってね。絵にしてみたよ。わかりやすいでしょ?さて「道具屋」という噺は古典落語ですが古くからある小咄を集めたオムニバス形式の落語だそうな。道具もランプとか出てくるから、時代設定は明治にしてみました。おじさんは、ろくでなしの与太郎に自分が『副業』でやっている”あること”をやらないかと提案した。「知ってるよアタマに『ド』の字のつくやつだろ?」「何だ、知っていたのか」「うん、泥棒!」「道具屋だよ…」「その鋸はな、火事場で拾ってきた奴なんだ。紙やすりで削って、柄を付け替えたんだよ」ランプの三脚は脚が一本取れて『二脚』になっている。お雛様の首はグラグラで抜けそうだし、唐詩選は間がすっぽ抜けていて表紙だけ…。

「まぁ、置いとけば誰かが買ってくれるよ。」「おじさん、この掛け軸、ボラが尾で立ってそうめん食べてるね」「バカ、そいつは鯉の滝登りだ。支那の黄河の中流には竜門というところがありをそこを登った鯉は竜となるという故事っがあってな…。」「なるほど、そういう性質のある魚なら橋からバケツで水を流し、滝だぞ!と鯉に叫んで、そこで登って来た鯉をつかまえよう!」と与太郎はバカなことを思いつく。が、まあ、それはどうでもいいとして、与太郎は市に行きました。もう、筋書きかくのめんどくさくなってきたので、実際に落語でもきいてください。いろんな人が買いに来るんだけど道具はみんなクズものばかり。ここで道具をつかった小咄で噺家さんは我々を楽しませてくれるところですね。「ちょっと、それを見せてくれんか?」「あ、それ…、足が二本しかないんですよ」「それじゃ、立つめえ」「だから、石の塀に立てかけてあるんです。この家に話して、塀ごとお買いなさい」「おい、その短刀を見せんか」「反対側から引っ張れ。抜くのを手伝うんだ。一・二の…サン!! ぬーけーなーい!」「抜けないはずです…! 木刀です!! 」「”抜ける物”はないのか?」「えーと…あ、お雛様の首!」「それは抜けん方がいいな。」と言って帰って行く。桂枝雀さんの「道具屋」のオチはこう。次に来た笛を見ていた客が笛の穴に指を入れたら抜けなくなった。与太郎は真のバカなので「抜けないから買ってもらえる」と思う。「豚カツでビール飲んで帰ろうかな」「着物つくろうかな」「米が切れてるな」「おっかあに芝居でもみせてやりたい」「家なおそう、瓦も畳もかえて」「それならいっそ家建ててもらお」とそこまで妄想していたときお客がいない!「あ!逃げられた!ドロボー!」「家を一軒盗まれた!」チャンチャン!ウィーンの旅行記書くのがめんどくさくて他のものをアップしとこうと思ったのに、よけいに面倒くさかったわ!

 

 

100歳までの健康の智慧

日本経済新聞出版社より発売された中村雅美さん著「100歳までの健康の智慧」のカバー描きました。二日酔いなので手抜き更新…です…。