伊野孝行のブログ

うどんの国に生まれて

発売中の「dancyu」でおつとめさせていただきました。特集「うどんの国ニッポン!」日本はうどんの国であるぞ、とこの特集は言ってます。全国各地のうどんをキャラにしてみました。まずは一覧の図。クリックすると大きくなるでよ〜。お次ぎは見開き用に描いたうどんの海。夫婦岩を結ぶのはしめ縄ではなくうどんです。これもクリックすると大きくなります。それではうどんキャラに戻って見ていきましょう。まずは「讃岐うどん」日本を全国的に制覇した感のある讃岐うどん。親しまれる長、エラっそうではない支配者、田子作みたいな感じ、と注文があったので、よくわからんけどこんなキャラにしときました。僕は三重県津市出身、同じく三重の「伊勢うどん」は子供の頃からよく食べた、というのは嘘で大人になってから食べました。伊勢うどんのレポートは「大人力」でおなじみの石原壮一郎さん。三重県出身で「伊勢うどん友の会」の主宰。『昭和40年代に永六輔さんが、伊勢で見慣れないうどんを食べて「これは伊勢うどんだ!」と叫び、ラジオ番組やエッセイでも紹介して、その存在が広く知られるようになりました。同時に伊勢の人たちも、自分たちが食べているうどんが、よそとはちょっと違うらしいことに気づきます。』なんてすごくおもしろいことが書かれています。これは本屋で即買わねば。伊勢だから伊勢神宮の巫女さん風に…。さてその次は「京うどん」色白、しなやか、やわらかい。京美人ということでかんざしはうどん、櫛はかまぼこ。うどん柄の着物です。だんだん説明するのが面倒になってきたので、さっさと行きますが、続いて「博多うどん」ラーメンよりも伝統があるそうです。「ごぼ天のおうどんつかーさい!」そのつぎは日本最硬の「富士吉田うどん」吉田富士という力士にしてみました。富士の裾野をながれるのはうどんの川でごんす。お次ぎは栃木の山里に伝わる珍うどん「姫うどん」とも「耳うどん」ともよばれてます。形が麺じゃなくて餃子みたい。なので御姫さまで、着物の形がうどんの形をあらわしています。次は高級品、「稲庭うどん」大店の若旦那イメージで描いてみました。400年まえに僧侶が伝えたとされる「水沢うどん」はもろ僧侶キャラ。托鉢のかわりにうどんをもって念仏となえます。「大阪うどん」といえばやはり出汁がうまい。出汁の海で泳ぐキツネです。さてどん尻にひかえしは「名古屋うどん」きしめんあり、味噌煮込みありのチャレンジ精神がええよ。信長らしきキャラで襟巻きがきしめん。味噌樽にまたがってます。ここのレポートは沼由美子さんというライターなんですが、彼女は大学の美術部の後輩なんでした。先月号の「新しい日本酒の教科書」という号は早くもsoldoutしているdancyu、今号もsoldout間違いなし。udon特集kattene! sorejya,mataraishu-!

若きウィリアムの悩み

「無名塾」の公演「ウィリアム・シェイクスピア」のチラシに絵を描きました。5月18日〜25日に吉祥寺シアターで上演されます。デザインは市川きよあきさん。「シェイクスピアの若い頃の話だから、髪の毛があったほうがいいですね」というリクエストだったので、髪の毛を足しておきました。
みんなが知ってるシェイクスピアは完全に禿げてますが、あの肖像画は何歳くらいのものなんでしょうね。外国人のかたは三十代で完全に禿げている方もいらっしゃるのでシェイクスピアは二十代でこのくらいまできてたと私は想像しました。わたしは27歳のときに自分で気づきました。
無名塾のサイトはこちら。

 

 

美術時評5ヶ月

「芸術新潮」で好評連載中、藤田一人さん「わたし一人の美術時評」の挿し絵から。まずは最新号より。お題は「キュレーション時代の終焉」。キュレーションとか、キュレーターという言葉はいつ頃から使われはじめたんでしょうね。要は美術館で展覧会を作る学芸員の仕事ですが、最近はIT用語にもなってるみたいです。最新号なので内容は雑誌を買ってお読みいただくとして絵だけね。京都の「哲学の道」を歩きながら「こんなところに哲学はない!」と憤慨したり、崔洋一助監督の作ったスケジュールをみて「君のスケジュールには思想がない!」と怒った大島渚監督ならきっとこう言うんじゃんないかな?と思って描きました。で。お次ぎはその前の2月号。「現実逃避のすすめ」という題でした。あの大震災でほんとうに日本はかわったのか?かわらなけらばならないのか?「政治が前向きなのは分かる。が、芸術はむしろ懐疑的であってもいい。現状に果敢に立ち向かうのも分かるが、衰退を受け入れ、静かに最後を看取ることを模索してもいい」しっかりと現状把握をした上での現実逃避の提案です。危機の時代の芸術問題です。ところで「ムンクの叫び」って叫んでるんじゃなくて耳をふさいでいる絵なんですよね。なので瓦礫のなかで音楽を聞く少年です。1月号は「美術商はすべて古物商なのだ」です。日本で美術商になるにはどうすればいい?答えは簡単、古物商許可を申請すればいい。「美術品の価格を決定付けるのは圧倒的に付加価値。基本的に減価償却を終えたモノを再生して世に送り出す、古道具・リサイクル品の価値設定とかわりはない。」「美術品の価値とはモノ自体にではなく、モノに付加された様々な価値観にあるというわけだ。」なるほどー。ってことはこんな一コマ漫画はいかがでしょう?はいお次ぎは、12月号「高度経済成長世代のノスタルジー」です。世界を股にかける村上隆さんには村上裕二さんという弟がいて兄弟そろって画家です。しかしお兄さんとは対照的にアカデミックなエリートコースを歩んでおられる。ところが裕二さんが最近「ウルトラマン」をテーマに作品を発表。村上隆さん、奈良美智さん、ヤノベケンジさんらの海外での高い評価をうける仕事も、その元には少年時代に見た漫画やテレビの世界が原風景としてある。うってかわって僕自身のことをかんがえると、もちろん自分にとっても漫画やテレビは原風景として焼き付いてる。しかし、あまり利用はしていない。もしかして自分の方が不自然かも。ま、いいや。こんな絵を描いておきました。11月号「美術家は大らかにつるむべし!」です。そうなんです、友達って大切だ。一人じゃ絵は描けない。自分が成長していくときには友達が必要だと思う。よく「独学で絵を学ぶ」なんて経歴に書いている人いるけど、ほんとかなと疑う。独学は危険です。

 

 

最近のモノクロ4つ

今週は去年から今年に描けてやったモノクロの仕事を4つただ並べるだけの手抜き更新。まずは「小説現代」の梶よう子さんの小説「立身いたしたく候」より。つづきまして倫理研究所発行「新世」の「思い出オルゴール」というページに描いた瀧廉太郎作曲の「箱根八里」の絵。つづきまして「日経プレミアPLUS」に描いた、宴会のリテラシーの絵。たとえ宴会と言えどもそこは出世の糸口がある、宴会をあやつるくらいの心構えが大切だという内容だったきがする。おしまいは「中央公論」に描いた「同窓会特集の扉絵」より。ではみなさんさようなら。

仕事の半分は

去年に出た本ですが、立川談志楼さん「談志が死んだ」(新潮社/装丁 田中愛子さん)福井栄一さん「上方学」(朝日文庫/装丁 桂川潤さん)のカバーを描きました。この2つの仕事に共通していたことは、「談志が死んだ」では編集者に、「上方学」では著者にカバーのイメージがハッキリとあり、僕の作業はただ絵におこすだけで良かったということです。「談志が死んだ」は談志が愛飲してたスコッチウィスキー「J&B」に戒名「立川雲黒斎家元勝手居士」の千社札を貼り、「J&B」を立川談志のイニシャル「T&D」に変えて、家紋を入れる。「上方学」は奈良の大仏、京都の舞妓さん、大阪のきつねうどんをそれぞれ描く。「立川雲黒斎家元勝手居士」の文字はデザイナーの田中愛子さんにそれっぽいフォントで出してもらってなぞりました。田中さんは「今回は、伊野さんのいつもの持ち味を活かせなくてすみません」というようなことをおっしゃってくれましたが、そんなことありません。内心、「ラッキー!」と思ってました。なぜってアイデアを考える必要がないから。楽チン!そう思うと、僕に限らずイラストレーターの仕事は、半分はアイデアを絞り出すことですね。頭脳労働です。いや、イラストレーションに限らず、絵はすべてそうか。

 

 

自画像/24日から!

厳選されたモノを紹介する「GoodsPress」という雑誌で、「ヴァン・ゴッホ色鉛筆」なるものを使って、初心者向けに、お手本として絵を描く、というお仕事をした。「ヴァン・ゴッホ色鉛筆」はゴッホの名前を冠してあるが、特に関係はないようだ。しかし、ゴッホ風のタッチで絵を描いてみることになった。初心者が風景や花を描いてもたいていつまらない結果に終わる。何もエラっそうな意見ではなく、僕自身も風景や花に主題を見つけることは難しい。ゴッホの「ひまわり」や「はね橋」が傑作なのは、動機が結晶しているからだ。なので、僕のお勧めするのは「自画像」。これなら誰でもそれなりに面白いものが描けるのではないかと思うし、見せられる方も感想が言いやすい!この自画像はさっそく友人の間で物議をかもした。「なぜ、他人の顔を描く時と違って、自分の顔は四割増しに描くのか」と。そう、僕は今までも、仕事で描いた似顔絵を著者自らのチェックの段階で、作家のNさんからは「悪意を感じる」タレントのOさんからは「なにもこんなにジジィに描かなくっていいじゃない」と編集者を通して感想をいただいた経験がある。お二方とも僕は大ファンで著作も熟読しているし、自分なりに愛をこめて描いたつもりなのだが、あらためて似顔絵、肖像画の難しさを知り、反省の日々をおくった。僕自身、友達に描かれた似顔絵などを見るとイヤな気持ちになることもあるので、よくわかる。しかし似顔絵はまぎれもないひとつの「客観」であり、受け入れるかどうかで器の大きさも知れるというものだ。…などと語る人間が、自分のことは四割増しに描くとは、よほど小さい人間で、自分を客観視するのがコワいに違いない。…自画像というのは、いろいろ面白いものなのだ。一応ちゃんとゴッホの模写なども描いておきました。たしかに、色鉛筆はゴッホタッチを描くのには向いてるかも知れない。ところで、僕の拙著「画家の肖像」の原画展が24日から大阪でひらかれます。厳密に言うと原画だけではなく描き下ろしも含まれます。「画家の肖像」も自分としては愛をこめて描いてるつもりだけど本人達は怒るかもしれない。ほとんどが故人なのでその心配もないが。24日は楽しい楽しいオープニングイベントもあります。一夜かぎりの紙芝居「ゴッホ物語」(たぶん二度と再演はない)もあるし、落語もあるし、トークショーもあるし、それにワンドリンク付いて1000円!安っ!まだお席ございますので、THE14thMOONに是非問い合わせを!THE14thMOONのサイトはこちら!

そうそう、個展のときに同時開催する「画ッ奏新聞あんさんぶる。」のサイトも作ってみました。もともと手配りだけのフリーペーパーですがひよってWEB版を作ってみたのです。24日のイベント当日は「画ッ奏新聞あんさんぶる。」の参加作家さんも多数来ますので、楽しく歓談いたしましょう。「画ッ奏新聞 あんさんぶる。」WEB版はコチラ!今回の大阪展でとても助けてもらっている、いぬんこさんの展示が大阪の梅田、MARUZEN&ジュンク堂書店にてあります「おかめ列車」です。今の絵本業界でまったくの異色作家、おかめなのになぜか相撲取りみたいな顔、大好きです。旦那さんのチャンキー松本さんとのイベントが26日にあります。コテコテてんこ盛りのイベントなのでお子様連れで是非!おかめ列車嫁に行くフェアはコチラ!