伊野孝行のブログ

坊主LOVE

先週はお盆休みということでブログの更新もさぼりました。お正月とお盆以外は毎週火曜に地味に更新しています。そんなブログですがどうぞよろしく……。さて、小説現代で連載中の梶よう子さんの「立身いたしたく候」の第2回はなんと「坊主愛」。そして、ミミズが重要な役割を担います。男同士でミミズ…なにやらイケナイ展開になりそうですが、この小説は武士の就職活動物語です。挿し絵を描く小説がおもしろい、こんな楽しいことはありません。また、こんなむずかしいこともありません。みんなが言うことですがやっぱり挿し絵ってむずかしいです。話はかわりますが、昨日8月20日から銀座のリクルートのG8で恒例のTISの展覧会をやってます。今年は「絵に描いた座右の銘」です。今年からわたしはG8委員というものをやっていまして、昨日はオープニングレセプションの司会進行役!をやるハメになりました。もともと滑舌が悪い上に声がこもっていて聞こえにくいのに、司会だなんて…。家で練習していったのにそのかいもなく、たどたどしい司会ぶりだったようです。そのおかげではじめて和田誠さんのほうから声をかけていただきました。「人前でしゃべるってのはたいへんなことだよね。」と。同様に安西水丸理事長をはじめいろいろな方からなぐさめとはげましのお声をかけていただき、どんだけ初々しい司会者やねん!と自分にツッコミをいれていた一夜でした。

8月28日(火)に呉智英さんと南伸坊さんのトークショーがあります。無料です!みなさん聞きに来て下さい。予約が必要ですのでこちらへお電話してくださいね〜。

トークショー予約受付中!ここをクリック!

 

 

東海道五十三次

「日本薬師堂」で商品を買うリピーターのお客さんには毎月挨拶状が届きます。絵はがきになっておりまして、東海道五十三次を日本橋から京都まで老夫婦が旅をしてまいります。旅人の装束として杖がありますが、このおじいさんとおばあさんは杖も必要ないくらい元気です。きっと日本薬師堂のグルコサミンを飲んでいるからかしら。今はまだ「神奈川宿」のあたり。絵は上から順に「神奈川宿」「川崎宿」「品川宿」「日本橋」。

 

 

引越し地蔵の手帖

「引越し地蔵の手帖」なんじゃやらほい?ですが、まずは双葉社の書き下ろし文庫シリーズの「引越し侍」の2冊目カバーを描きました。デザインは長田年伸さん。続いては講談社の書き下ろし文庫シリーズの「立ち退き長屋顛末記 聞き耳地蔵」のカバーです。前回は「火除け地蔵」でした。次は何地蔵だろう?デザインは川上成夫さん。こちらはパーツごとに別けて描いたものを渡してます。最新号の「美術手帖」8月号の「INFORMATION」というコーナーで「画家の肖像」を紹介してもらいました。(つーか自分で紹介記事書いております。)『この本には1人のイラストレーターが描いた44人の画家の肖像画がおさめられている。
1人のイラストレーターというのは……これを書いている私です。自分で自分の本を紹介する厚顔をお笑いいただきたいが、自分というのはあんまり自分をわかっていなかったりする。事実、私は南伸坊さんによるこの本の「解説」を読んでみて、自分の仕事の輪郭がはっきりとした。たよりない話である。伸坊さんは解説でこう書いてくださった。
『「絵画による絵画論」。これはもう、ひとつのジャンルができあがったというべきだろう。 (中略) アイデアを思いついて、それを絵にしてるだけじゃない。描きながら考えて、描きながら論をすすめている。つまり絵による「絵画論」なのだ。』
自分の絵って何だろう?これが自分の絵だと決めつけていやしないか?私がいろんな画家の肖像を描こうと思ったのは、その作業の中で、自分の絵だと思いこんでるものを笑いとばしたかったからだ。自分の絵なんてなくて、描けばなんでもそれが自分の絵なのだ。
もうひとつは、画家や絵について「絵」で語りたかった。おもしろい絵を見ても、それを言葉で伝えるのはとてもむずかしい。頭と体の中にはおもしろさが充満しているのに、なかなか言葉に置き換えられない。きっちり説明ができないからこそ魅力的なのだとも言える。おもしろさを言葉に変換しないでそのまま絵にして出す。言葉にしてみてわかることがあるように、絵に描いてみてわかることもあった。
そもそも絵と言葉は次元が違うものなのに、なぜ我々は今まで絵について言葉で語ってきたのだろうか?絵の感想は絵で言う。「絵画による絵画論」。これからはコレだ!』

◎「画家の肖像」お取り扱い店紹介コーナー!

只今のお取り扱いいただいている懐の深いお店は、ポポタム、タンバリンギャラリー、トムズボックス、府中美術館(以上東京)ガケ書房(京都)itohen(大阪)ウラン堂(神戸)でございます〜。

偉人の言葉 座右の銘

今売っている「日経おとなのOFF」は「座右の銘」特集。偉人の名言コーナーで、ぬぁんと、77人の似顔絵を描きました。まあ、でも偉人の似顔絵というのは、アイドルとかの似顔絵にくらべればすごく楽。資料自体少ないし、顔が出来上がっている上に、ヒゲなんぞを生やしている場合が多いし、そもそもどんな顔だったかはっきりわからない人もいるし…。でもわたしがいつも理想としている似顔絵名人(和田誠さん、峰岸達さん、南伸坊さん、二宮由希子さん)が描くような、省略とセンスの良いデフォルマション(おっとフランス語)が効いたグラフフィックな感じのする似顔絵にしたかった…のだが今回も断念。制作時間が短かったという言い訳もあるが、まだまだ修行が足りぬということだろう。

はい、おつかれさまでした。あと「座右の銘とのつきあいかた」というコーナーでも描きました。

 

 

最近の美術時評/書評

「芸術新潮」で連載中の藤田一人さんの「わたし一人の美術時評」最近アップしてませんでしたが、もちろん毎月やってます。藤田さんの美術記者魂あふれるコラムに負けじと私もくだらない絵を描いてます。マツコ登場!この回は「広報の台頭と批評の衰退」というテーマで美術館の展覧会の広報活動にPR会社が入るようになって、雑誌などの美術記事がいいなりになっている、という問題。美術記事はたとえ情報記事のひとつであっても、広告ではない。代理店何様?編集者もしっかりしなさい!記者もそんな注文無視すべき!…という内容でしたのでマツコデラックスのような記者がいればいいのに…と。つづいての回は「美術団体再考」という内容でした。師弟関係、年功序列、中央集権的権威構造…日本美術界の諸悪の根源とされてきた美術団体が弱体化している。いつのまにやらアートシーンの片隅に追いやられてしまったのです。美術団体の問題点は自民党の派閥政治と重なる部分も多く、自民党が政権の座から転がり落ちたこととともに時代の変化はさけられない。しかしその後の政治とおなじく美術界も混迷をきわめている様子。あまりに市場原理が行き過ぎてせちがらくなると、古いと思われた体制にもそれなりに良い点もあった?…とも考えられます。ちょうどこの号の頃、小沢一郎の無罪判決がでて、ちょっと息をふきかえしてきたところだったので小沢一郎に登場ねがいました。息をふきかえしたら、さっそく政局混乱活動をしはじめました。これは最新号のコラムです。「現状追認の”賞”への不満」という内容。賞は貰う方より、あげる方の見識が問われる。すでに認められつつある作家、乗ってる仕事をしている作家に賞をあげているのが現状のようです。それは賞が現状の追認に傾くことで、現状を切り開くことにはなっていない。賞をあげるほうに先を見通す展望が欠如しているのでは?ということが詳しくかいてありますので是非「芸術新潮」を買って読みましょう!てなわけで、いっぱい賞をもらった若手作家がトロフィーをゴミ箱に捨てているの図でした。

はい、ここでおなじみの「画家の肖像」宣伝コーナー〜!7/4発売の「サンデー毎日」の書評で南伸坊さんにとりあげていただきました。……解説も書いていただいてますが…。この記事を読んでミュージアムショップの人が置いてくれないかなぁ。文中にもあるとおり、赤瀬川さんの絵についての文章はスゴい。そして伸坊さんの絵についての文章もスゴイ。1ミリでも近づきたい。どうスゴいかというと、絵を描いている人だからこそ気づく指摘がするどい。これは絵を描いている人なら誰でもできるわけではない。言葉の才能が必要だ。もちろん言葉の才能だけではできない。なぜなら言葉のプロである小説家や詩人が絵についての文章を書いても、そんなにおもしろくないから。文章の専門家は絵や画家を自分の世界に引込みすぎで、結果的に推測の域をでないことが多い。赤瀬川さんや伸坊さんはあくまで絵や画家そのものを問題にしている。問題の糸口はやはり絵を描いている人でないと見つけられない。発見がスゴくて、そこから論をおこしていくおもしろさがたまらない。あ〜、自分なんてただボーッと見てただけだなぁ、と思う。さっそく赤瀬川さんのフェルメールの本をアマゾンで「ポチッとな!」しましたよ。(サンデー毎日さん、勝手に転載してごめんなさい〜。許して〜。)

サルにも劣る

飛鳥新社からチョイと前に出た「専門家の予想はサルにも劣る」のカバーを描きました。ダン・ガードナーさんという人が書かれた本です。専門家の予想がいかに当たらないか。チンパンジーの投げるダーツより当たらないらしい。大震災と原発事故を経験した我々は、専門家の言うこともどうやらあてにならないらしい、と感じてはいるが、さて何故そんなに当たらないのか?心理的、社会的なトリックを解き明かしたのがこの本です。デザインはモリサキデザインさんです。原書ではチンパンジーの写真が表紙に使われていたので、こっちは専門家とチンパンジーのダーツ合戦にすることにしました。表1に顔を出しているチンパンジーはカバーのそでにもまわっているのですが、ダーツに苦戦する専門家を影から笑ってるような感じにしたかったんです。原画はこんなかんじ。表4は逆にチンパンジーが簡単に的に当てるのを、専門家が「どうして…?」というふうにしたかったんです。余談ですが、このあいだDVDで「猿の惑星 創世記」を見てとてもおもしろかった。見終わってしばらくは猿の真似をしていた。我が家にはチンパンジーのぬいぐるみがあり、急にそいつがかわいくなってきて、そいつでも遊びました。この本のカバーの絵はぬいぐるみを見ながら描きました。