伊野孝行のブログ

恋文横丁

今月の泉麻人さんの「ロケ地探偵」は女優、田中絹代の監督作品「恋文」だった。日本で二番目の女性監督の第一回作品でもある。しっかりした作品でおもしろかったなー。映画に記録された物事、そしてこの連載は毎回僕にいろいろなことを教えてくれる。(画像はクリックするときれいになります。)「恋文横丁」という狭い路地の一帯が出てくる。渋谷の109あたりの区画は昔はこんな風だったのかと、感慨深く知ることが出来る。「パンパン」などと呼ばれた米兵相手に交際する日本女性のために、ラブレターを代筆する店が、このあたりに軒を並べていたので、そういう名前で呼ばれるようになった。宇野重吉が女たちから「先生、先生」と慕われて、ときには人生相談にものってあげる代筆屋をしている。その店で森雅之が、昔、愛を誓ったはずの久我美子と再開する。この店に来るお客ってことは、久我美子もパンパンガールなの!?ずっと逢いたかった久我美子につい逢えたというのに…。森雅之が追いかけていって京王井の頭線のホームでふたりはついに面とむかう。そんなシーンを描きました。

大江戸あにまる「象」

「小説すばる」に連載中の山本幸久さんの小説に描いた絵です。う〜む…線画というのは難しい。いざ本番となると、どうも気楽な感じがどこかいってしまう。ならば、本番と思わないで、描き散らした中から選べばいいではないか、という手もある。実際そうやっていたりもする。しかし心の中で、本番用の絵を描いている、という邪念が入るとあまりいい結果はでない。一枚前目の絵は大八車に早桶を積んで二人で運んでいるところ。桶の中には象の骨が入ってる。こんな場面は下書きなしには描けないし、やはりいざ本番って感じになっちゃうな〜。こういうのはトレースして描いてしまうからきっとダメなんだ。木村荘八は下書きは横に置いて描く、と言っていた。小村雪岱はトレース派だそうだ。今度は木村荘八流でやってみよう。

 

 

アキラのツイスト!

先月の「ロケ地探偵」は小林旭主演「夢がいっぱい暴れん坊」だった。この映画が公開された62年はツイストダンスが大流行。アキラも映画の中でご機嫌なツイストをシャウトしている。やっぱアキラの歌は最高ネ!今回のロケ地は銀座だが、日活は大きなオープンセットを持っていたから、実際の風景とうまくミックスされて使われている。この絵は当時の映画ポスターを参考にして描いた。なぜなら送られてきた泉麻人さんの原稿に「ところで今回のイラスト、劇中には出てこないが、三共ビルの建つ銀座2丁目付近の通りでアキラがナイスなポーズをキメタ、宣伝ポスターを参考に描いてもらった。」とすでに書いてあったから。もちろんこの原稿を読んだ時点では描いてないのだが、こういうのも楽しいな〜と、うれしくなりました。おかげで普段なら作らない構図になって、自分の絵としてもすこし新鮮だ。

 

 

迷宮美術館

NHKの番組「迷宮美術館」で仕事しました。「迷宮美術館 さよなら名画展」NHK BS-Hi 3/8(月) 22:00〜22:43、 BS-Hi  3/9(火) 12:00〜12:43、BS-Hi 3/10(水) 8:00〜8:43で放送されます。8日は昨日ですので、もう終わってしまいましたが…。ウチはBSが映らないので見れない。しかし総合放送でもたまに再放送しているそうなので見たいと思います。迷宮美術館てBSの番組だったのか〜。僕が描いたのはバルビゾン派のルソー(素朴画のアンリ・ルソーにあらず)とミレーの友情のお話。番組では段田安則さんのこういうナレーションが入ってるはずです。

「すぐ近くの家に住み、家族ぐるみの付き合いをしていたルソーとミレー。2歳年上のルソーは、画家として一足先に名声を得ており、貧乏なミレーが描いた作品を高値で、しかも気を使って別人の名を語り買い取ってあげたということもあったそうです。」

「さて、村で20年も暮らした、ある寒い冬のこと55歳のルソーは病に倒れ、寝たきりになってしまいます。」

「友の看病に、つきっきりとなったミレー。衰弱するルソーを、ミレーは抱きしめました。『死ぬなルソー!また一緒に、村の絵を描こうじゃないか!』『ありがとうミレー・・・お前を友に持った私は、幸せだったよ。さっ、もう時間だ。一足先に旅立たせてもらうよ』…こっくり。」

という感じです。良かったら観て下さい。余談ですが、担当のディレクターさんのお名前が「祐乗坊」さんでした。あれ?もしや?と思い「祐乗坊さんて◯◯さんとご関係あったりするんですか?」と聞くと「はい、父です。」と言われました。へー、驚き。ちなみにディレクターの祐乗坊さんと僕は同い年。父上の◯◯さんとは誰か?出版業界の人ならすぐわかるはず。(ヒント…元「太陽」編集長。今は作家。「文人悪食」おもしろかったな〜)

また火曜がきた

一応、火曜はブログ更新の日としているが、一週間は早いなあ。ロンドン旅行記など、ネタはあるけどちゃんと書こうと思うと億劫で、後まわしにしてしまう。そのうち旅の記憶も薄れてしまうかも…。昨日やっと時差ボケが治りました。というわけで、今回は「波」で連載中の「中野トリップスター」の挿絵2回分でお茶を濁そう。3話の1回目と2回目です。林家パー子みたいなおばさんが登場、そしてハリマオみたいだね、と言われているところ…って絵を見ただけではなんのこっちゃわからないと思いますが。

 

 

おさむちゃん、でーす!

「マンスリーよしもとplus」の仕事。作家の万城目学さんが子供の頃、妹の通っていた幼稚園のバザーに付き添いで行くと、「おさむちゃん」がいたというお話。約25年前、当時「ザ・ぼんち」でブレイクしていたおさむちゃんは、アニメの上映会場の片隅にいた。「薄暗いなか、大きな目をきらきらさせながら、静かに三角座りをしていたおさむちゃんの横顔が今も忘れられない。」という文章を絵にしてみた。小さいからわかりにくいですが、まあまあ似てるのではないでしょうか。ダメ?おさむちゃん、なんて簡単に描けると思ってたのに、なかなか苦労した。似顔絵はどれぐらいで仕上がるか時間が読めない。今回は雰囲気重視でね、コテコテじゃないおさむちゃんの側面を出したかった。だからそんなに似てなくても問題ない。ダメ?