伊野孝行のブログ

加山雄三と表参道など

昨年のことになるが、銀座でポン・ジュノ監督の「母なる証明」を観た。見事なショットとショットの積み重ねが、知らないうちに心の芯の部分を打ち続けていたようで、エンドロールが始まると、どこから来たのかわからない涙が溢れ出た。映画館を出て有楽町の街を歩いているときも、急にこらえきれない感情がこみあげてきた。まさに、映画でしか味わえない感動である。で、この翌日、DVDで加山雄三主演「海の若大将」を観たのである…。(クッリクすると画像は多少綺麗になります。)

「若大将シリーズ」実は初めて観たのだが、登場人物は全員、小学校低学年くらいの思慮で行動するので、こっけいを通り越してシュールの域に達していた。友人に聞くと全シリーズそうらしい。加山雄三は黒沢明や成瀬巳喜男の映画でちゃんとした芝居もしているが、この能天気で無神経な若大将は、やはり加山雄三でしかできない。彼のギリシア彫刻のような顔とともに、この映画の見所はそういった快晴の空のごとき馬鹿なのだが、昨日「母なる証明」を観た後ではなんともいえない気分にもなる。「ロケ地探偵」としては今回は表参道。昔は「ユアーズ」というおしゃれなスーパーがあった。都電も走っている。この通りは月に2度ほど通るので感慨深いものがある。この「ユアーズ」で水泳部の部員に食わせる食料を買い込むシーンがある。英語の書かれた缶詰が実はドッグフードだったというギャグなど、見所満載である!

ツイッターやってまっせ。伊野孝行ツイッターはこちらです。よろしく。

 

 

ツイッターはじめました。

ツイッターはじめました。その前に、今年のボツ作品の供養をしておかねば。しておかねば、ってことでもないんですけど。ああ、このブログは画像が綺麗にでないな〜。年末になって愚痴を言ってても仕方ないか。で、ツイッターなんですが…ミクシィは続きませんでしたけど、気軽なのでいけそうです。まだ昨日の深夜にはじめたばかりですが。伊野孝行ツイッターはこちらです。よろしく。

と、いうわけで今年はこれでおしまいです。このブログを見に来てくださった皆様、ありがとうございました。来年も時々見てやってください。よいお年を!

 

 

私も探偵してみた

「泉麻人のロケ地探偵」今回は1952年制作「魚河岸帝国」という映画。「帝国」というあだ名で呼ばれる、運送業の荒くれ親分には山村聰が扮している。ハゲのヅラをかぶっているので最初はコントを見ているようだった。しかし映画をみていくうちに山村聰の芝居にひきこまれてハゲヅラはまるで気にならなくなる。この連載は、泉さんが映画のロケ地を当てるというのが、腕の見せ所である。毎回ほんの数秒のシーンを言い当てるのが、さすがとしか言いようが無い。(画像はクリックすると綺麗に大きくなります。毎度のことながら。)

今回は僕も推理してみることにする。といってもロケ地ではなく、屋台ののれんについてである。映画の冒頭、スタッフ紹介の字幕に、「美術 河野鷹思」とでてきたので、おおっ!と思った。河野鷹思の若き日のデザインを集めた「青春図画」は僕のバイブルでもある。松竹キネマの宣伝部に所属していたというから、その関係で美術をつとめていたのだろうか?しかし、魚河岸のゴミゴミしたセットや、従業員たちのタコ部屋や…いったいどこの美術を担当したのだろうと、それらしきもの、を見つけられなかった。ところが終盤の屋台ののれんがハッとするほどグラフィックで洗練されて可愛かったので、きっとこれに違いない!と嬉しくなった。(たぶん他にも担当箇所はあったのだろうが、僕が推理できたのはここだけです。)その画面を描き写してみました。ホントはもっとキマッてます。タコののれんをバックにしてハゲヅラの山村聰が飲んだくれてるのもおかしいシーンでした。

 

 

中野トリップスター2話

新潮社「波」で連載中の新野剛志さん「中野トリップスター」の第二話が終了したので、まとめて載せてみます。版画のテクスチャーを使ったり、クレヨン使ったり、悪戦苦闘しております。来月から第三話がはじまります。

 

 

お風呂の入り方

ANAのプレミアムな会員の皆様に配られる「アズール」という雑誌で仕事をした。私の画風がプレミアムな会員の皆様にも喜ばれることが、これでおわかりになっただろう。がははははは〜っ。内容は正しいお風呂の入り方のあれこれ。クッリクすると大きくなるので、クリックするのさえ面倒くさ〜い、という方以外はぜひクリックしてみてください。

お気に入りのカットを大きくのせてみます。お風呂に入っている時、おしっこがしたくなるのは、「体が温まってくると腎臓の血流が良くなり、働きが活発になる。そのため尿の生産が増えるのだ。」と文章にある。僕は体が温まる以前に、湯船につかった瞬間にしたくなる。それまでは全く尿意がなかったにもかかわらず。ってこんな文章を打っていたらなんだかおしっこがしたくなってきたよ、まじで。

 

 

こちらも時代物だけど

先週の「小説すばる」につづき、今週は「野生時代」の連載「通りゃんせ」の扉絵でございます。こちらも時代物だけど、小説の内容に合わせてニュアンスを変えています。こっちは現代の若者が江戸時代にタイムスリップして、お百姓さんとなって江戸時代を身をもって実体験する話なので、俳画のようには描けませんでした。

僕はそれなりに小説に合わせて描こうとするのですが、他の方はどうしてるのかが知りたいところです。合わせるといっても、本人合わせたつもりでも読む人に よっては合ってないと思うかもしれないし、その逆もあるでしょう。開き直って自分を押し通した方がいいのかな?とも思います。どっちにしろ合えば相乗効果 が生まれ、合わないと苦しいでしょう。文章と絵を取り持つ編集者にたのむとこ大ですね。