伊野孝行のブログ

大人と子どものいい関係

福音館「母の友」5月号の特集「大人と子どものいい関係」で絵を描きました。杉山亮さんによる「たぶん正しい子育てのスタンダード十カ条」です。家族でキャンプをしております。お父さんと子どもはバドミントンをして遊んでいたら、バドミントンの羽が木の高いところにひっかかってしまいました。そこへあらわれたクマの親子。子グマが得意の木登りでスルスルと木に登っていき、羽をとってくれました。それをほほえましく見つめる親たちであります。…というような絵じゃ。これは特集の見開きの扉絵。クリックするとでっかくなるよ。見てみてね。子どもといっしょに動物を飼おう。人形を与えよう。季節を愛でよう。ステージをいっしょに楽しもう。物語を伝えよう。食べ物を作ろう。服を吟味しよう。その他にもありますが、絵の出来がいまいちなのは省きました。私は子どもがいませんが、すごく納得できるいいことが書かれていますので、世の中のお母さんは読むべし!お父さんも「母の友」を買おう!

フランシス・ベーコン

只今、国立近代美術館で開催中の「フランシス・ベーコン展」はもうご覧になられましたか?絶対お見逃しのないように!あーおもしろかった。欲をいえば最後の部屋、最近のダンサー(名前忘れた)のダンス映像だけで一部屋使ってましたが、もっともっとベーコンの絵を見たかったな。というわけで、ベーコンの肖像を描いて(彫って)みました。ベーコンて坂上二郎さんに似てるんだよね。このシリーズは去年から何点か作っていて他にもこんなのあります。マルセル・デュシャンの肖像マン・レイの肖像レオナルド・ダ・ヴィンチの肖像ディヴィッド・ホックニーの肖像藤田嗣治の肖像。藤田の欧文表記はFUJITAではなくFOUJITAであるらしい。なのでちょっとまちがった。はい、いつもの自画像。これは版画として実際に刷ったもの。版画にしちゃうと版木が真っ黒になってしまうのでこのシリーズは基本的には刷らない一点ものです。はい、おまけで宣伝「画家の肖像」ハモニカブックスより発売中〜!コチラをクリック!この本はあの赤瀬川原平先生も「おもしろい」とおっしゃっていたと人づてに聞いたのである。よろしくおねがいします!

日本の画家第2巻

汐文社から発売中の「教科書に出てくる日本の画家 第2巻 日本画家篇」に描いた画家の似顔絵です。「日本画」というのは明治に西洋から入ってきた油絵「洋画」に対向して、なんとか日本独自の絵を成立させねばならん!と作られたものです。それまで東洋画の一部であった日本美術ですが、「日本画」は大陸由来の部分より日本独自で発達した特長を強調したものといえばいいのか…なんだか定義しにくいのが「日本画」であります。とりあえずこの分け方でいくと、横山大観、川合玉堂は「日本画家」であるが狩野永徳や伊藤若冲は「日本画家」ではないということになる。ナショナリズムさかんな時代から戦後日本が復興を成しとげた頃までは「日本画」にたいへん権威があった。現在は「洋画」「日本画」と区別するのも無意味な時代で、金ピカの額縁に入って、絵具がコテコテに塗ってある「日本画」を見ると「いったい、これの何が日本画なのだろうか…?東洋という栄養分がなくなった日本画って何なのだろうか…?」と思わずにいられないイノッチです。余談はさておきダダダッと並べて失礼します。横山大観狩野芳崖橋本雅邦菱田春草竹内栖鳳土田麦僊速水御舟川合玉堂小野竹喬上村松園鏑木清方徳岡神泉小倉遊亀片岡球子東山魁夷平山郁夫

うどんの国に生まれて

発売中の「dancyu」でおつとめさせていただきました。特集「うどんの国ニッポン!」日本はうどんの国であるぞ、とこの特集は言ってます。全国各地のうどんをキャラにしてみました。まずは一覧の図。クリックすると大きくなるでよ〜。お次ぎは見開き用に描いたうどんの海。夫婦岩を結ぶのはしめ縄ではなくうどんです。これもクリックすると大きくなります。それではうどんキャラに戻って見ていきましょう。まずは「讃岐うどん」日本を全国的に制覇した感のある讃岐うどん。親しまれる長、エラっそうではない支配者、田子作みたいな感じ、と注文があったので、よくわからんけどこんなキャラにしときました。僕は三重県津市出身、同じく三重の「伊勢うどん」は子供の頃からよく食べた、というのは嘘で大人になってから食べました。伊勢うどんのレポートは「大人力」でおなじみの石原壮一郎さん。三重県出身で「伊勢うどん友の会」の主宰。『昭和40年代に永六輔さんが、伊勢で見慣れないうどんを食べて「これは伊勢うどんだ!」と叫び、ラジオ番組やエッセイでも紹介して、その存在が広く知られるようになりました。同時に伊勢の人たちも、自分たちが食べているうどんが、よそとはちょっと違うらしいことに気づきます。』なんてすごくおもしろいことが書かれています。これは本屋で即買わねば。伊勢だから伊勢神宮の巫女さん風に…。さてその次は「京うどん」色白、しなやか、やわらかい。京美人ということでかんざしはうどん、櫛はかまぼこ。うどん柄の着物です。だんだん説明するのが面倒になってきたので、さっさと行きますが、続いて「博多うどん」ラーメンよりも伝統があるそうです。「ごぼ天のおうどんつかーさい!」そのつぎは日本最硬の「富士吉田うどん」吉田富士という力士にしてみました。富士の裾野をながれるのはうどんの川でごんす。お次ぎは栃木の山里に伝わる珍うどん「姫うどん」とも「耳うどん」ともよばれてます。形が麺じゃなくて餃子みたい。なので御姫さまで、着物の形がうどんの形をあらわしています。次は高級品、「稲庭うどん」大店の若旦那イメージで描いてみました。400年まえに僧侶が伝えたとされる「水沢うどん」はもろ僧侶キャラ。托鉢のかわりにうどんをもって念仏となえます。「大阪うどん」といえばやはり出汁がうまい。出汁の海で泳ぐキツネです。さてどん尻にひかえしは「名古屋うどん」きしめんあり、味噌煮込みありのチャレンジ精神がええよ。信長らしきキャラで襟巻きがきしめん。味噌樽にまたがってます。ここのレポートは沼由美子さんというライターなんですが、彼女は大学の美術部の後輩なんでした。先月号の「新しい日本酒の教科書」という号は早くもsoldoutしているdancyu、今号もsoldout間違いなし。udon特集kattene! sorejya,mataraishu-!

若きウィリアムの悩み

「無名塾」の公演「ウィリアム・シェイクスピア」のチラシに絵を描きました。5月18日〜25日に吉祥寺シアターで上演されます。デザインは市川きよあきさん。「シェイクスピアの若い頃の話だから、髪の毛があったほうがいいですね」というリクエストだったので、髪の毛を足しておきました。
みんなが知ってるシェイクスピアは完全に禿げてますが、あの肖像画は何歳くらいのものなんでしょうね。外国人のかたは三十代で完全に禿げている方もいらっしゃるのでシェイクスピアは二十代でこのくらいまできてたと私は想像しました。わたしは27歳のときに自分で気づきました。
無名塾のサイトはこちら。

 

 

美術時評5ヶ月

「芸術新潮」で好評連載中、藤田一人さん「わたし一人の美術時評」の挿し絵から。まずは最新号より。お題は「キュレーション時代の終焉」。キュレーションとか、キュレーターという言葉はいつ頃から使われはじめたんでしょうね。要は美術館で展覧会を作る学芸員の仕事ですが、最近はIT用語にもなってるみたいです。最新号なので内容は雑誌を買ってお読みいただくとして絵だけね。京都の「哲学の道」を歩きながら「こんなところに哲学はない!」と憤慨したり、崔洋一助監督の作ったスケジュールをみて「君のスケジュールには思想がない!」と怒った大島渚監督ならきっとこう言うんじゃんないかな?と思って描きました。で。お次ぎはその前の2月号。「現実逃避のすすめ」という題でした。あの大震災でほんとうに日本はかわったのか?かわらなけらばならないのか?「政治が前向きなのは分かる。が、芸術はむしろ懐疑的であってもいい。現状に果敢に立ち向かうのも分かるが、衰退を受け入れ、静かに最後を看取ることを模索してもいい」しっかりと現状把握をした上での現実逃避の提案です。危機の時代の芸術問題です。ところで「ムンクの叫び」って叫んでるんじゃなくて耳をふさいでいる絵なんですよね。なので瓦礫のなかで音楽を聞く少年です。1月号は「美術商はすべて古物商なのだ」です。日本で美術商になるにはどうすればいい?答えは簡単、古物商許可を申請すればいい。「美術品の価格を決定付けるのは圧倒的に付加価値。基本的に減価償却を終えたモノを再生して世に送り出す、古道具・リサイクル品の価値設定とかわりはない。」「美術品の価値とはモノ自体にではなく、モノに付加された様々な価値観にあるというわけだ。」なるほどー。ってことはこんな一コマ漫画はいかがでしょう?はいお次ぎは、12月号「高度経済成長世代のノスタルジー」です。世界を股にかける村上隆さんには村上裕二さんという弟がいて兄弟そろって画家です。しかしお兄さんとは対照的にアカデミックなエリートコースを歩んでおられる。ところが裕二さんが最近「ウルトラマン」をテーマに作品を発表。村上隆さん、奈良美智さん、ヤノベケンジさんらの海外での高い評価をうける仕事も、その元には少年時代に見た漫画やテレビの世界が原風景としてある。うってかわって僕自身のことをかんがえると、もちろん自分にとっても漫画やテレビは原風景として焼き付いてる。しかし、あまり利用はしていない。もしかして自分の方が不自然かも。ま、いいや。こんな絵を描いておきました。11月号「美術家は大らかにつるむべし!」です。そうなんです、友達って大切だ。一人じゃ絵は描けない。自分が成長していくときには友達が必要だと思う。よく「独学で絵を学ぶ」なんて経歴に書いている人いるけど、ほんとかなと疑う。独学は危険です。