新・伊野孝行のブログ

タグ:似顔絵

2020.12.1

かわいいから好き、三島由紀夫

三島由紀夫の本は数冊しか読んでないけど、三島由紀夫の絵は何枚も描いてきた(自主制作で)。
逆に夏目漱石の本はだいたい読んだし、絵も何枚か描いてるけど、三島由紀夫ほどには面白く描けない。

三島由紀夫の肖像

寺山修司にのぞかれる三島由紀夫

野坂昭如と殿山泰司と色川武大と三島由紀夫

先日、未見だった三島由紀夫の主演映画『からっ風野郎』を観たけど、始終、三島由紀夫がかわいくて退屈しない。演技が下手ということだけではくくれない。
三島由紀夫はエピソードが歩いていると言ってもいいほど、彼について語られるエピは多い。そしてどれもがかわいらしい。かわいいと思う理由はどのエピにも本心が見えるからで、素っ裸な三島由紀夫がいる。エピソードが面白い人というのは滅茶苦茶な人が多いのに、三島由紀夫は誠実で努力家で優しい人なんだ。不思議。
三島由紀夫の字が好きだ。丁寧で綺麗な字なのに惹きつけられる。丁寧で綺麗だなんてつまらないことではなかったか。人生は生き急いでいるのに、字は急いでないね。
何を言っても何をやってもエピソードになるという人は、やっぱりズレているんだろう。

川端康成と三島由紀夫と金閣寺と

文壇座談会

『人斬り』の演技は立派で、切腹シーンは張り切ってハラキリしている。
引用すると負けた気になるWikiに、五社英雄監督が田中新兵衛役を依頼するため三島邸を訪問した時のことが書いてある。
〈三島は「私は時代劇てものはやったことがないけど鬘はのるかね?」とニコニコしながら、すでに気持は決まっていたにもかかわらず、それでも一応勿体つけた様子で、「ともかく明日中に返事をします」と五社を見送った。しかし三島は我慢できずその日の晩すぐに五社に電話を入れ、「ぜひ出させてくれ」と引き受けた。〉
かわいいではないか。割腹自決する前年の話だ。

1970年の岡本太郎と三島由紀夫

三島由紀夫図書館

我が絶対的恩師、長沢節と三島由紀夫のエピもいい。
三島由紀夫の方から長沢節に興味を持って会いたいと言ってきたみたい。三島が新鋭作家として登場した頃。昭和21年頃(1946)頃だろうか。鎌倉文庫が席を設けてくれて、日本橋の料亭で初めて会った。
その後、三島は椎名町のアトリエにしょっちゅ遊びにくるようになって、長沢節がモデルを前に絵を書いていると、三島も脇でおとなしく何かの紙に同じように絵を描いてたんだって。
やっぱりかわいい。
ちなみに長沢節の方が三島由紀夫より8歳上。もちろんこの頃はムキムキになる前だったから、セツ好みとまではいかないまでも、許容範囲ではあったでしょう。
一度、ぼくは先生とタクシーに乗った時に、三島由紀夫のことを聞いたら「オレ、三島由紀夫からラブレターもらったことあるよ。でも捨てちゃったけどね!プッ!」とおっしゃっていました。


映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』も観ましたがよかったです。

三島由紀夫の絵は完全に自主制作で描いてきたけど、この度、記念すべき没後50年にあたり、「芸術新潮」が三島由紀夫特集を組み、頼まれて三島由紀夫を描くことになった。
読んでくだされ、見てくだされ。平野啓一郎さんの解説がとてもいいです。まさしく「21世紀のための三島由紀夫入門」になっています。

『英霊の声』零戦と船艦、こういうのを描かせると思いっきりヘタだ。逃げたい一心で描いている。

三島由紀夫のエンタメ小説『命売ります』は没後45周年にあたる2015年、突如ベストセラーになった。無理矢理1ページマンガにしております。気になるつづきはぜひ芸術新潮で。

座談の名手、三島由紀夫は安部公房と「二十世紀の文学」という対談をしている。どんな内容だか知りたいですか?知りたいですよね!なら、芸術新潮を買いましょう。

なんだコレは⁉︎
ポットになった三島由紀夫がなにか喋っているゾ!我ながら最高の絵が描けた。ともかく本屋に芸術新潮を買いに行くしかない!

2020.11.24

半芸術の志村神社

現代美術とは現代に生きる人が作った作品全てなんでものことなのですが、普通はなかなかそう言いません。「現代美術」というジャンルのことを指す場合が多いですね。
ただいま、3331Arts Chiyodaで開催中の「WAVE2020」に出品しております。この展覧会は特にジャンルもテーマもない展示で、言わば、現代に生きる人が作った作品という意味での現代美術なのかもしれません。

ワタクシなんぞはイラストレーターでげすから、何でもいいから作品出してくださいと頼まれると、逆に困ってしまいまして、さてどうしたものでしょうか。
展覧会自体にテーマがないということは鑑賞者に文脈をいっさい掴ませないということなのです。作る方は展覧会のテーマという文脈に自分のテーマを乗っけられないので、それぞれが一人相撲を取らないといけません。

一方「現代美術」というジャンルは、文脈というものをとても重要視するようです。美術史の文脈を踏まえた上で新たに何か付け加える。さらに今現在のNOWな問題を取り入れたり先取りしたりする。
自分のやってることにいかに説得力を持たせるかも腕のうちなので、現代美術家はプレゼン能力が非常に高い人が多い。
ワタクシなんぞはイラストレーターでげすから、そういう能力はあまり必要ない。絵の仕事に対して漠然と憧れを持っていたときから、現代美術作家ってどうやってなるのかサッパリ見当がつかなかったです。マンガ家はストーリーも作らなきゃいけないし、仕事自体が過酷。その点、イラストレーターは落書きの延長でなれると思ったのです。事実、落書きの延長でなれました。

「反芸術」という言葉の意味を、引用すると負けた気になるWikiからひっぱってきますと〈反芸術は芸術作品に対する定義で、伝統的な展覧会の文脈の中で展示されながら、真剣な芸術をあざ笑うかのような内容を持つ作品、また芸術というものの本質を問い直し変質させてしまうような作品のこと。さらに既存の芸術という枠組みを逸脱するような芸術思想や芸術運動のこと。〉だそうです。

今回の「WAVE2020」の一人相撲のテーマはコレにしましょう。いや「反芸術」なんてそんなツッパったこと出来やしない。せめて半分くらいは芸術という意味で「半芸術」でどうでしょう。(とうじ魔とうじさんの『半芸術』という本を昔読んだので、まぁ………パクリです)

日本という国は、古くから死んだら神様になる珍しい国です。菅原道真の怨霊を鎮めるため、東郷平八郎を顕彰するため、お国のために戦った英霊たちを祀るため。明治になって神道は国家神道になり、歪んだ形になりました。多大な犠牲を払って大日本帝国は崩壊。その反省からか戦後は死んでも神様にならなくなりました。
それはそれでなんとなくもったいない。前にも書きましたが、古今亭志ん生神社はあってもいいなと思います。笑いの神と貧乏神が一緒にいる神社。将来的に長嶋茂雄神社もありだと思います。

今年、もし今が戦前だったら確実にこの人は神になって神社ができただろうなと思うケースがありました。
それは志村けんさんです。コロナ禍の悲劇を国民と共有した喜劇王。未だ惜しむ声はやみません。やや持ち上げ方が過剰なんじゃない?とも思えるのですが、持ち上げすぎじゃなければ神になりません。
志村神社の作品化は、特殊な文脈を持つ日本という国と、現在起こっている出来事とを、つなぐことが出来るのではないでしょうか。
現代美術は造形物が必要ですが、神社を建てるのはめんどくさすぎます。もっと簡単なもの。絵馬でどうでしょうか。

長々と下手なプレゼンを述べてまいりましたが、そんなこと汲み取ってもらえなくても、笑って見ていただければ本望でございます。「WAVE2020」展は29日まで開催してます。

以下「アイーン」への道。

えっと、右手をこうして、っと。

せいの、アイーン!「ダメダメ全然アゴ出てないよ」by撮影者

アイーン!こう?「え〜、もっと出ないの?」by撮影者

俺ってどっちかというとややしゃくれ気味なんだけどなぁ、アイーン!

「横から撮ったらアゴ出るんじゃない?」by撮影者

はじめて「アイーン」をやってみたが、確かにあとで写真を見ると全然「アイーン」になってない。撮影者に言われてあごも精一杯出したつもりだが、その指示にも間違いがあった。アゴを出すと同時に口角を上げなければいけなかったのだ。アイーンへの道は遠い。

2020.11.10

笑ってなんぼじゃ!似顔絵編

2017年〜2018年、日本農業新聞で連載していた島田洋七さんの自伝エッセイ『笑ってなんぼじゃ!』が終わった後(徳間書店より文庫化されています)、ひきつづき週一で『笑ってなんぼじゃ!世相編』と題するエッセイがはじまった。最近の出来事を取り上げて洋七さんの見解を述べるというもの。

島田洋七さんの自伝エッセイ『笑ってなんぼじゃ!』、挿絵のダイジェストはこちらご覧いただけます。

ずいぶん前から始まっていたのだけど(もう80回以上続いている)、このブログで紹介するのは今回がはじめて。
今週はまた「ブログをサボりたい症候群」になっていて、昨日の夜中まで、ほんま、サボったろうと決めていたのだが、いざとなると休むのもなんか気持ちが悪く、無理してやっています。
絵をチョイスしたり、画像を整えたり、もう一度エッセイを読んだりするのが、億劫。
それで似顔絵の回だけ選んで載せておくことにしました。
エッセイがどんな内容だったか忘れてしまったので、絵だけ。
やる気がない〜めんどくさい〜と公言しながらやれるのも自分のブログならではのこと。仕事だとこうはいきません。

イチローは非凡な男ですが、似顔絵の出来栄えは並。

たけし。ちょっと惜しいな。

王監督。似てるとは思うけど、これも並。

洋七さん。何度も描いているから、写真を見ないで描くことも多い(そっちの方が似る場合もある)。でも、平均していつもあんまり似ない(笑)。これはわりと似たかも。

これは誰かというと現役時代の琴風。今の尾車親方ですね。現役時代の琴風を知っている人がどれくらいいるかわからないけど、まあまあ似たかな。

洋七さんの弟弟子にあたる島田紳助。これもまあまあ似とんのちゃう?

志村けんが似なかった。コロナでお亡くなりになった時に描いた。追悼の気持ちを込めて描いたのだが、それで似るとは限らない。

藤井聡太の似顔絵はかなり気に入っている。かわいい。

安倍元首相。マスクで半分顔が隠れている似顔絵を描いたのははじめてかもしれない。顔が半分隠れると似ませんね。

はい、おしまい。

2020.10.6

僕とラジオとトレンディと

「日経トレンディ」の特集「ラジオ大研究」で、ラジオ史に輝くパーソナリティー達の似顔絵を描きました。

出版業界でもっともラジオを聴いているのはイラストレーターなのではないかと思う。ライターや編集者は文章を書いたり読んだりしないといけないので、ラジオを聴きながらだと仕事ができない。デザイナーは独立してる場合はいいけど、会社でコキ使われている間は呑気にラジオなんかつけてられないでしょう。
イラストレーターは家で一人で仕事してるし、絵は言語の脳ミソとは違うミソを使うので、ラジオを聴きながら仕事できる。

文化放送「セイ!ヤング」の谷村新司。この番組を聴いてた人は僕より世代が上の方ですね。

僕の実家は、食事中はテレビは禁止というか、飯を食う部屋にテレビはなかった。そのかわりラジオはほぼつけっぱなしで、NHKだった。中学生になると妹と一緒の子ども部屋から、自分の個室になった。はじめてのプライベート空間。晩ごはんを食べ、部屋に戻ると意外にすることがない。
ラジカセについているラジオをつけてみた。はじめて積極的にラジオを聴いた。いつしかCBCラジオ(中部日本放送。主に東海地方で聞ける)の「小堀勝啓のわ! Wide とにかく今夜がパラダイス」という番組を中毒的に聴くようになっていた。「わ! Wide 」は絶大な人気を誇るラジオ番組だったが、そんなことは知らないで聴いていた。だいたい小堀勝啓という人も知らない。今でもはじめて聴く番組は、誰がしゃべっているのかわからないことがある。そこがいい。

文化放送「さだまさしのセイ!ヤング」のさだまさし。「セイ!ヤング」の打ち切りを知って激怒したさだまさしは「さだまさしのセイ!ヤング」として復活させた。

小堀勝啓には局アナらしくない自由な発言と自己主張があった。カーディガンとメガネが似合うお兄さん的キャラ。都会的な雰囲気(といっても名古屋だけどね)。小堀勝啓はたまにゲストに来る田原俊彦(当時アイドルの頂点にいた)を「トシ」と呼んで非常に親しげだった。田原俊彦も「小堀さ〜ん!」と親しい。どこまで本当に仲がいいのかわからないが、小堀勝啓は親しみのある感じを出すのが上手い(逆になれなれしすぎる雰囲気に途惑うゲストもいたような)。ローカルとはいえ影響力のある人気番組なので、東京からのゲストも暖簾をくぐるように、ちょっと腰を落として入って来るような感じがした。

中学のクラスにウメモト君という男子がいた。彼はどうやら僕のことを嫌いなようだった。ところがある日、ウメモト君も「わ! Wide 」もリスナーであることが判明し、僕たちは一気に仲良しになってしまった。それまで友達と昨日見たテレビの話はしてたけど、昨日聴いたラジオの話ってしたことがなかった。ラジオは一人で聴いている気がするのだ。

ニッポン放送「オールナイトニッポン」のビートたけし。「オールナイトニッポン」を聴いてたといってもいつも途中で寝ちゃうから。はじまる前に寝ちゃうときもあるし。だって中高生なんだもん。

「わ! Wide 」をきっかけに「オールナイトニッポン」も聞くようになった。聞いていた当時の「オールナイトニッポン」のパーソナリティは、月曜日が中島みゆき→デーモン小暮、火曜日がとんねるず、水曜日が小峰隆生→小泉今日子、木曜日がビートたけし、金曜日がサンプラザ中野→鴻上尚史、土曜日が笑福亭鶴光だったと記憶する。
この中で誰これ?と思うのは水曜日の小峰隆生だろう。「週刊プレイボーイ」の編集者だったはず。「オールナイトニッポン」の居並ぶ有名人パーソナリティーの中にポコっと入ってるフリーの編集者。後年、神保町の喫茶店でバイトしているときに、小峰隆生が来た。「あ、小峰隆生だ」と思ったが、誰に言ってもわからないと思ったのでバイト仲間には言わなかった。

ニッポン放送の「三宅裕司のヤングパラダイス」三宅裕司。番組は聴いてなかったんですが、人気コーナー「恐怖のヤッちゃん」の書籍化、映画化のビジュアルは中村幸子さんのイラストなのは知ってました。

高校生になって聴いてたラジオは「ケラのFMナイトストリート」。この番組にゲストに来たことをきっかけにエンケン(遠藤賢司)さんの大ファンになったことは前にも書いた。ケラはナゴムレコードというインディーズレーベルの社長さんでもあって、そこから出ていた筋肉少女帯や人生やたまのレコードを買って聴いていた。大槻ケンヂの「オールナイトニッポン」の投稿者のラジオネーム「こずえのまたしゃぶろう」って名前がくだらなすぎて未だに覚えてる。風の又三郎の下ネタね。

TBSラジオ「コサキンDEワァオ!」の関根勤と小堺一機。7月、ある仏教研究者の方と銀座の居酒屋で飲んでいたら、僕がトイレに行っている間に、その先生と居酒屋の店員さんがコサキンの話で盛り上がっていました。

大学に入ったら、ラジオは全然聴かなくなった。再び聴きだしたのは30代半ば。「大沢悠里のゆうゆうワイド」と「ストリーム」を中心に前後の番組を聴いていた。つまりTBSラジオばかり。未だにダイヤルを指で回してチューニングするタイプのラジオで聞いているので、局を変えるのがちょっとめんどくさい。「大沢悠里のゆうゆうワイド」という超・長寿番組の中に、毒蝮三太夫と永六輔と小沢昭一のコーナーがあった。未来永劫続くのではないかと思ったが、やはりそういうわけにもいかない。

小西克哉の「ストリーム」は雑誌みたいなラジオで「コラムの花道」という日替わりコメンテーターによるコーナーがあったが、雑誌が面白い条件もまた、コラムが面白いことだと思う。雑誌とラジオは似てる。

J-WAVE「TOKYO HOT 100」のクリス・ペプラー。若い時の写真が見つからず、ヒゲを無くしてみただけ。

眠れない夜は、睡眠導入剤の成分が入っている「ラジオ深夜便」にチューニングをあわせる。寝入った数時間後、やかましい音楽に起された。その日はレッド・ツェッペリン特集をやっていた。ラジオ深夜便のリスナー世代を考えると不思議ではない。

大相撲中継は北の富士勝昭のファンなので、北の富士がラジオ解説の時は、テレビのボリュームを消して、ラジオの音でテレビ観戦をしたりする。
やはり文章を書く時はラジオは聴けないので、「伊集院光とらじおと」を消してブログを書いてました。さ、今からはラジオをつけてイラスト仕事をしよう。

「2751人に聞いた!好きなラジオ番組」という日経トレンディのアンケートで1位に輝いたのが「オードリーのオールナイトニッポン」。コーナーが違うので少しタッチを変えて。